住宅ローン控除と3000万円特別控除の併用に潜むリスクについて徹底解説

個人の住宅の売買には税制面でいろいろなサポートがあります。中でも利用しやすいのが、売却で得た利益の3000万円まで非課税になる制度と、新しい住宅を購入した場合の住宅ローンについて一定額の税額控除が受けられる制度の2つです。ただし、この2つは基本的に併用がしづらいものです。制度として併用できなくもないのですが、実際にはリスクも伴います。

3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用は無理といわれる理由

売却益のうち3000万円までは控除されて非課税となる制度を「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」といいます(以下「3000万円特別控除」といいます)。

一方、住宅ローンで住宅を購入した場合に、ローンの年末残高の1%を10年間税額控除する制度を住宅借入金等特別控除といいます(以下「住宅ローン控除」といいます)。原則上限は40万円(中古住宅の場合は20万円、認定住宅の場合は50万円)です。税額控除はその金額を納税額から直接に差し引くもので節税効果が高いものです。

売却益に3000万円特別控除、ローンに住宅ローン控除と両方を使いたくなりますが、残念ながら基本的にはできません。なぜなら、住宅ローン控除の適用条件に、住み始めた年とその前後の2年ずつの5年間に3000万円特別控除を受けていないことが挙げられているからです。

併用が無理な場合、どちらが得か計算する必要がある。

どちらかを選ばなければならない場合、どちらが得かはケースバイケースなので具体的な計算が必要です。

3000万円特別控除を利用しない場合、売却益に課税されます。5年を超えて所有している場合は長期譲渡課税の税率が適用されます。所得税15%と住民税5%です(正確には2037年まで復興特別所得税が0.315%加わります)。所有期間が短かったり、所有期間が10年を超えていたりする場合には別の税率が適用される可能性もあります。

3000万円特別控除を利用した方が得な例

税金は売却して得た収入そのものにかかるのではありません。収入から、旧居を購入した費用や不動産会社への仲介手数料などを差し引いた額が課税対象となります。ですから、4000万円の収入を得ても、もとの購入額や手数料などを引いた額が1000万円であれば、1000万円が課税対象額です。

旧居の売却で1000万円の売却益があり、新しい住居で2000万円のローンを組んだとします。3000万円特別控除を利用せず、住宅ローン控除を選択した場合どうなるでしょうか。まず、1000万円に20%の税率を掛けると、売買益での課税は200万円となります。

住宅ローン控除は年末残高の1%が税額控除されますから、1年目は2000万円の1%つまり20万円が控除されます。翌年以降も10年目まで税額控除を受けられますが、ローンが返済されて残高が減っていると控除額も少なくなります。したがって、2年目以降の税額控除は20万円以下となります。よって、10年間の累計額も200万円以下となるでしょう。

このような場合、住宅ローン控除よりも3000万円特別控除を利用した方が得となります。

なお、住宅ローン控除はその年の納税額以上にはお得になりません。納税額が15万円の人は、20万円の控除が認められても税がお得になるのは15万円までであることも要注意です。

住宅ローン控除を利用した方が得な例

旧居の売却での利益が500万円だったとします。この場合、売却益への課税額は100万円です。住宅ローン控除で受けられる控除額は、たいていのケースで100万円を超えるでしょう。

住宅ローン控除で10年間どれだけお得になるかは返済ペースやその間にもかかる利子なども含め複雑な計算を要します。仮に年間100万円返済して利子などは考えずに大雑把に計算すると150万円程度となります。

なお、住宅ローンが高額であれば10年間の控除額はもっと大きくなります。このような場合も3000万円特別控除よりも住宅ローン控除の方が有利となります。

併用が可能となる場合

両者が併用できないのは住宅ローン控除の適用条件に「その前後2年」は3000万円特別控除が使えないことが原因でした。裏を返せば「前後2年」以外の年に旧居を売却すれば併用は可能だということです。

○先に住宅ローン控除を使って新居を購入した場合

2年経過後に旧居を売却すればよいのですが、今度は3000万円特別控除を受けるための期限に気を付ける必要があります。3000万円特別控除の適用条件に「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」とあるからです。

例えば2018年に住宅ローン控除を使って新居を購入した場合、2年後の2020年末まで3000万円特別控除は使えず、その後3000万円特別控除を使うには2021年12月31日までに売却しなければなりません。売却のチャンスは1年しかないことになります。

先に3000万円特別控除を使って売却した場合

住宅ローン控除を受けるには前後2年に3000万円特別控除を受けていなければよいので、上記の例では2年後の2021年後に新居を購入すれば併用可能となります。その間の2年は賃貸住宅や実家などに住むことになります。

併用のリスク

制度としては可能ですがリスクもあります。先に住宅ローン控除を使った場合、売却には1年しかありません。売り急ぐことで安値でしか売れないことがあります。近くにスーパーができるなど高く売れる可能性もありますが、タワーマンションができて住宅供給過多となるなど相場が安くなることもあります。また、のんびり買い手を探していられなければ不動産仲介業者に買い取ってもらわざるをえず、その場合は安値となりがちです。

先に3000万円特別控除を使った場合、しばらく実家や賃貸に住むことになります。ただ、そもそも新居を構えたいのであれば遠回りとなり、併用する意味があるかは個別の事情によるでしょう。また、住宅価格が上昇傾向なら新居を高値づかみするリスクもあり得ます。

まとめ

併用することも可能ですが、後悔しない住み替えができるかどうかリスクを伴います。一般に言われるように併用しないという選択も十分合理的なものです。

併用せずにどちらかを選ぶ場合、どちらがお得になるかしっかりシミュレーションしておきましょう。復興特別所得税や住宅ローンの返済ペースや利子、納税額なども考慮して詳細な数字を出して検討することが大事です。

監修者-近藤会計事務所 税理士 近藤弘之

近藤会計事務所
中央大学卒業後、近藤会計事務所に入所。平成25年税理士資格取得。平成28年近藤会計事務所を父から引き継ぎ、良質なサービスをリーズナブルな価格で提供。2手3手先を読んだ提案で常にオーナーシップを持って接してくれる渋谷区の税理士。様々な場所で講演会やセミナーも実施中。

近藤会計事務所
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http://www.kondo-kaikei.net/
[所属]東京税理士会渋谷支部

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