不動産売却は、一生に一度あるかないかという大きな決断です。不動産売却を考えている方は、売却価格や手数料などの費用面だけでなく、税金も気になることでしょう。
この記事では、不動産売却に関する特別控除の種類や適用条件、計算方法などを簡潔に理解できるように解説します。
不動産売却を今すぐ考えていない方でも、将来的に売却する可能性がある方は、ぜひ参考にしてください。
不動産売却で税金を節約する方法とは?
不動産を売却すると、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。しかし、特別控除という制度を利用すれば、税金を節約できる場合があります。
特別控除とは?
特別控除とは、譲渡所得税を計算する際に一定の税額を控除できる制度です。
特別控除は、公共事業などによって土地や建物を手放さなければならない場合や、自分や家族が住んでいた家を売却する場合などに適用されます。
特別控除の仕組みとメリット
譲渡所得税は、譲渡益(売却価格から取得費や必要経費を引いたもの)に所得税率と住民税率をかけて求めます。
特別控除は、譲渡益から一定の金額を差し引くことができます。つまり、譲渡益が小さくなり、譲渡所得税も少なくなります。
特別控除の金額は、種類や条件によって異なりますが、最大で5,000万円まで控除できます。これは非常に大きな節税効果です。
他の所得控除(基礎控除や配偶者控除など)とは異なり、所得全体ではなく譲渡所得だけに適用されます。つまり、他の所得があっても特別控除を受けることができます。
特別控除は、確定申告をすることで受けられます。確定申告は煩雑ですが、特別控除のメリットを考えれば、やってみる価値はあります。
不動産売却で得られる特別控除の種類と適用条件
不動産売却で得られる特別控除には、以下の7種類があります。それぞれの控除金額や適用条件を見ていきましょう。
収用等により土地建物を譲渡した場合の5,000万円の特別控除
収用等とは、国や地方公共団体などが公共事業などのために土地や建物を強制的に買い取ることです。
収用等により土地建物を譲渡した場合は、譲渡益が5,000万円以下であればその全額を、5,000万円を超える場合は5,000万円を控除できます。
この特別控除は、居住用財産であってもなくても、長期所有財産であってもなくても適用されます。
マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除
マイホームとは、自分や家族が住んでいた家や土地のことです。
マイホームを譲渡した場合は、譲渡益が3,000万円以下であればその全額を、3,000万円を超える場合は3,000万円を控除できます。
この特別控除は、居住用財産であることが必要ですが、長期所有財産であることは必要ありません。
被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
被相続人が住んでいた家や土地(空き家)を相続人が譲渡した場合は、譲渡益が3,000万円以下であればその全額を、3,000万円を超える場合は3,000万円を控除できます。
特定土地区画整理事業などのために土地を譲渡した場合の2,000万円の特別控除
特定土地区画整理事業とは、都市計画法に基づく事業で、道路や公園などの公共施設を整備するために土地を区画整理することです。
特定土地区画整理事業などのために土地を譲渡した場合は、譲渡益が2,000万円以下であればその全額を、2,000万円を超える場合は2,000万円を控除できます。
この特別控除は、居住用財産であってもなくても、長期所有財産であってもなくても適用されます。
特定住宅地造成事業などのために土地を譲渡した場合の1,500万円の特別控除
特定住宅地造成事業とは、都市計画法に基づく事業で、住宅用地として利用するために土地を造成することです。
特定住宅地造成事業などのために土地を譲渡した場合は、売却益が1,500万円以下ならその全額を、1,500万円を超える場合は1,500万円を控除できます。
この特別控除も、居住用財産か長期所有財産かに関係なく適用されます。
平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除
平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地とは、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した国内にある土地のことです。
この期間に取得した土地を譲渡した場合は、譲渡益が1,000万円以下であればその全額を、1,000万円を超える場合は1,000万円を控除できます。
この特別控除は、居住用財産であってもなくても適用されますが、長期所有財産であることが必要です。
農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除
農地保有の合理化などとは、農業経営基盤強化促進法に基づく事業で、農業経営者や農業法人などが農地を集積することです。
農地保有の合理化などのために土地を売った場合は、譲渡益が800万円以下であればその全額を、800万円を超える場合は800万円を控除できます。
この特別控除は、居住用財産でないことが必要ですが、長期所有財産であることは必要ありません。
低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除
低未利用土地等とは、国土交通省が指定する土地で、空き地や駐車場などに利用されている土地のことです。
低未利用土地等を売った場合は、譲渡益が100万円以下であればその全額を、100万円を超える場合は100万円を控除できます。
この特別控除は、居住用財産でないことが必要ですが、長期所有財産であることは必要ありません。
よくある質問
最後に、よくある質問をまとめています。疑問はここで解消しておきましょう。
特別控除や特例はいつも使えるわけではない?
特別控除や特例は、他の特別控除や特例と同時に使うことはできません。例えば、3,000万円の特別控除と居住用財産の買換えによる納税猶予は併用不可です。
また、3,000万円の特別控除と居住用財産の買換えによる納税猶予は、住宅ローン控除と併用することはできません。
なお、不動産購入時に住宅ローン控除を受けている場合は、住宅ローン控除が終了するまでの10年間は重複して利用できます。
特別控除・特例は複数使える?
ほとんどの場合、複数の特別控除・特例を使うことはできませんが、なかには使えるものもあります。
例えば、3,000万円の特別控除と10年超所有の居住用財産の優遇税率を併用することで、3,000万円の特別控除後に残る譲渡所得の税率を下げることができ、大幅な節税が可能になります。
3,000万円特別控除は何回も使えるの?
3,000万円の特別控除は何度でも使えます。3,000万円の特別控除を使いたい場合は、確定申告をする前に前年、前々年に使っていないか確認しましょう。
ちなみに、10年超所有の居住用財産の優遇税率も何度でも使えます。
店舗と住宅が一緒になっている不動産を売ったら3000万円特別控除は受けられる?
店舗と併用住宅であっても3,000万円の特別控除を受けることができます。ただし、対象となるのは店舗と住宅が一体となった居住部分のみです。
居住部分が全体の90%以上であれば、全体が居住用とみなされ、特例を受けることができます。
まとめ
不動産を売却した際に得られる特別控除は、譲渡所得税を計算する際に一定の税額を控除できます。
特別控除は、公共事業などのために土地や建物を売却した場合や、自宅を売却した場合に適用されます。この特別控除により、譲渡所得税が大幅に節税できる場合があります。
なお、この特別控除は、他の特別控除や特例と同時に利用することはできません。また、特別控除を受けるためには確定申告が必要です。
不動産売却を検討している方は、特別控除の種類と適用条件を確認しておきましょう。