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地盤沈下とは、自然現象や人為的な作業により地盤が沈んでいく現象です。
長く暮らすことを想定して購入した建物が、住んでいるうちに傾いてしまうなんて事態は絶対に避けたいもの。地盤沈下による影響は建物だけではなく、傾きの傾斜角度によっては、居住者の頭痛や食欲不振、睡眠障害を引き起こすともいわれています。
地盤沈下のリスクに関しては気にしない方が多くいますが、実際に2020年10月、東京都調布市で大規模な地盤沈下が発生しています。これは、地下47メートルを通る外環道の南行きトンネルの掘削が原因で、少なくとも10軒の民家が被害に遭っています。
この記事では、地盤沈下の原因とケース別の対策方法を詳しく紹介します。決して他人事とは思わずに、きちんとリスクを把握しておきましょう。
地盤沈下の5つの原因と対策方法
地盤沈下には、大きく分けて自然原因と人為的原因の2つの原因があります。自然原因は地震や洪水で、人為的原因は盛土や地下掘削が挙げられます。前述した調布市の例では、人為的原因が該当します。
ここでは、地盤沈下が発生する原因を一つずつ詳しく解説します。
地震
地震が地盤沈下を引き起こす原因は、地盤の液状化現象です。
液状化現象とは、本来は個体である地盤が地震などの強い外力が加わった際に支持力が急激に低下し、液体のようになる現象を指します。
液状化現象が起こると、建物だけではなく道路や橋なども沈下することがあります。また、発生した場所次第では、地域全体に大規模な被害を引き起こすケースも想定されます。
対策方法
地震による地盤沈下を防止するには、建物が地震の力を受け止め、地盤をしっかりと支えることが重要です。代表的な対策方法は以下の通りです。
- 地盤改良工法の導入
- 定期的な点検とメンテナンス
- 建物の耐震性向上
地盤改良工法には、地盤を補強する杭工法や支持材を埋め込む地下壁工法があります。地盤にコンクリートや杭を打ち込むことで、地盤の強度を向上させることができます。
また、地震による地盤沈下は発生が予測できないため、定期的な点検やメンテナンスにより、建物の耐震性や必要に応じた補修を行うことが重要です。
洪水
豪雨や大雨で河川や排水路の水位が上昇し、周辺地域に広がる現象を洪水といいます。洪水が地盤沈下を引き起こす原因は、「地盤の浸食」と「地盤の緩み」が挙げられます。
地盤の浸食とは、水の重さで地盤が圧迫されて沈下するというもの。洪水が発生すると水が地盤に浸み込むため、地盤中の粘度やシルトなどの微粒子が流れ浸食することがあります。
地盤の緩みとは、洪水により地盤に含まれる水分が多くなり、強度が低下して柔らかくなるというもの。地盤に含まれる水分が多くなる緩むため、地盤沈下の原因になります。
対策方法
洪水による地盤沈下を防ぐための代表的な対策方法は以下の通りです。
- 地盤改良工法の導入
- 河川の改修
- 堤防・護岸の整備
地盤を強化する地盤改良工法を導入することで、地盤沈下を防止することが可能です。地下空間に排水設備を設置することで、地盤にかかる水圧を抑えることができます。
また、堤防・護岸を整備することで、洪水時の水の流れを抑えることができ、河川を改修することで氾濫を防止する効果が期待できます。
さらに、気象庁や自治体が発表している洪水予測情報を活用するのも重要です。洪水リスクがある建物かどうかは、必ず事前に把握しておきましょう。
地下水の過剰なくみ上げ
地下水の過剰なくみ上げが地盤沈下の原因になることがあります。
地下水が多くある地域でくみ上げが進むと、土砂層の水分量が減少します。その結果、土の粘着力が低下し、建物や道路などの荷重に耐えられなくなり地盤が沈下していきます。
対策方法
地下水の過剰なくみ上げによる地盤沈下を防ぐための代表的な対策方法は以下の通りです。
- 地盤の改良
- 地下水位の定期的な確認
- 排水設備の設置
石灰処理法、壁式改良法、土壌改良剤法など、地盤の強度を高めるための改良工事を行うことで対策することが可能です。
また、地下水を適切に排水するための設備の設置、地下水位が過剰に低下していないかどうかの定期的な確認も欠かせません。
地下水位はボーリング調査、地下水位観測孔、モニタリングシステムの導入などで確認することができます。
これらの方法で地下水位を確認すると地盤沈下の危険性を予測できるため、危険性が高い場合のみ地盤改良を行うなどの対策を講じることが可能です。
盛土
埋め立てでは土地の表面を盛り上げるために土砂を積み上げますが、この盛土により下の地盤が圧迫されて地盤沈下を引き起こすことがあります。
盛土とは、傾斜のある地表に土を盛って平坦な敷地に造成する工法です。傾斜地を造成した宅地では、ほとんど盛土は地盤改良工事に使われています。
土には空気が含まれているため、しっかりと転圧しなければ空気を含んだままの地盤となり、その上に建物を建てると重さで空気が締め出されて沈下の原因になります。
対策方法
盛土による地盤沈下を防ぐ代表的な対策方法は以下の通りです。
- 地盤調査を行う
- 地盤の改良
- 盛土の厚みや土壌を適切に設計する
盛土を作る前は事前に地盤調査を行い、必要に応じて地盤の改良を行うことで地盤沈下を防ぐことができます。
また、盛土の厚みは荷重に応じて設計し、地盤沈下を招く原因になる軟弱な土壌を覆わないなど、適切に設計することが重要です。
しかし、盛土は施工業者が行うのが一般的であるため、個人で行える対策には限界があります。
地下掘削
地下掘削で地盤沈下が発生する主な原因は、地下水位の変化によるものです。
地下掘削で地盤から土を取り除くと、地下水の流れが変化します。これにより地下水位が低下すると、地盤が水分を失い緊密化し、地盤沈下が発生する原因になります。
また、地下採掘中に発生する振動や地震動で地盤が緩む、地盤を採掘面から押し上げるために軟弱化するなど、さまざまな原因が考えられます。
対策方法
地下採掘による地盤沈下を防ぐ代表的な対策方法は以下の通りです。
- 地盤の改良
- 監視と管理
地下掘削が原因で発生する地盤沈下は被害が大規模であることが多いため、個人の対策では防ぎようがない場合もあります。
しかし、鋼板杭やコンクリート杭、地盤改良材などの地盤改良で地盤を強くする、地下採掘の状況をリアルタイムで監視・管理するなどで対策は可能です。
地盤沈下による被害を最小限に抑えるための取り組みは忘れてはいけません。
まとめ
地盤沈下が起こる5つの原因とそれぞれの対策方法を紹介していきました。
地盤沈下とは地面が下がる現象のことで、地盤の支持力が低下することで発生します。発生する原因は、大きく分けると自然原因と人為的原因で、代表的な原因は上記5つが挙げられます。
地盤が沈下すると、建物が歪んだり傾いたりして、壁や天井に亀裂が入ることがあります。また、水道管や下水道管などの地下パイプが破裂することも想定されます。他にも、ドアや窓が閉まらなくなる、床が歪む、配水管が詰まるなどの被害が想定されるため、修理に高額な費用がかかることがあります。
また、地盤沈下により建物の価値や耐久性が下がることが予測されるため、将来的に建物を売却しようと考えている場合に損失を被る可能性があります。地盤沈下を防ぐためには、建物を建てる前の地盤調査はもちろん、建てた後でも地盤改良工事などを実施することで被害を最小限に抑えることが可能です。
地盤沈下に関して不安を感じている方は、ぜひこの記事を参考に適切な対策を講じてみてください。
