相続した実家が空き家になり、処分にお困りではありませんか。
不動産を売却して利益が出ると通常は多額の税金がかかりますが、「空き家特例」を活用すれば最大3,000万円まで控除が受けられ、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
しかし、この特例には複雑な適用要件があり、事前の確認が不可欠です。
本記事では、損をしないための要件や申請方法をわかりやすく解説します。
空き家特例(3,000万円特別控除)とは?

正式名称を「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、相続した空き家の売却時に利用できる所得税の軽減制度です。
この制度は、管理不全な空き家が周囲に悪影響を及ぼすのを防ぎ、土地の有効活用を促す目的で創設されました。
一定の条件を満たせば、相続した古い空き家を売却した際の利益から、最大3,000万円まで控除を受けられます。
通常、不動産の売却益には所得税や住民税がかかりますが、この特例を適用すれば税額をゼロ、あるいは大幅に抑えることが可能です。
ただし、適用のための要件が細かく定められているため、事前の入念な確認が欠かせません。
【チェックリスト】相続した空き家が特例の対象になるための要件

特例を受けるためには、「人」「物」「譲渡の仕方」の3つの側面で要件を満たす必要があります。
まずは、ご自身の状況が該当するか確認してみましょう。
被相続人(亡くなった方)に関する要件

特例の適用には、まず亡くなった方の居住状況が以下の条件を満たしている必要があります。
亡くなる直前まで住んでいたこと
原則として、相続が始まる直前まで亡くなった方がその家で生活していたことが条件となります。
老人ホーム等に入所していたケース
2019年の改正により、要介護認定等を受けて老人ホーム等へ入所していた場合も対象となりました。
ただし、入所後にその家を他人に貸し付けたり、別の親族が住んだりしていた場合は適用されません。
相続した家屋・敷地に関する要件

次に、建物の構造や築年数、利用状況に関する制限を確認しましょう。
1981年(昭和56年)5月31日以前の建築であること
いわゆる「旧耐震基準」で建てられた古い家屋であることが条件です。
「戸建て住宅」であること
この特例は一戸建てが対象で、分譲マンションなどの区分所有建物には適用されません。
売却まで「空き家」であったこと
相続開始から売却まで、一度も賃貸に出したり、相続人が住んだりしていないことが求められます。
更地での売却も可能
建物を解体して更地として売却する場合も適用されますが、その場合も、取り壊した家屋が上記の「空き家条件」を満たしている必要があります。
譲渡(売却)に関する要件

最後に、売却時の金額やタイミング、建物の状態についてのルールを確認します。
・売却代金が1億円以下であること
土地と建物の合計売却額が1億円を超えると、特例は受けられません。
・売却の期限を守ること
相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の、12月31日までに売却する必要があります。
・耐震基準を満たすこと
建物を残したまま売却する場合は、現行の耐震基準を満たしていることが条件です。
耐震性が不足している古い家屋の場合は、更地にして(取り壊して)から売却するのが一般的です。
空き家特例の申請に必要な書類と方法

この特例は自動的には適用されません。
ご自身で必要書類を揃え、期限内に確定申告を行う必要があります。
必要な書類
特に自治体が発行する「確認書」は、発行までに時間を要する場合があるため、早めの準備を心がけましょう。
被相続人居住用家屋等確認書
物件が所在する市区町村から取得する、特例適用のための書類です。
譲渡所得の金額の計算明細書
税務署へ提出する確定申告書の一部として、売却益を計算し作成します。
売買契約書の写し
売却価格や契約日を証明するために必要です。
登記事項証明書
建物の建築年月日や所有者の履歴を確認するために用意します。
耐震基準適合証明書など
耐震リフォームを行ってから売却する場合に、その基準を証明するために必要となります。
申請方法

売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に、管轄の税務署で確定申告を行います。
申請の主な流れは、まず物件所在地の市区町村へ「確認書」の交付を申請し、手元に届いた確認書を他の必要書類とともに確定申告書に添付して提出します。
なお、自治体への確認書申請では、電気・ガスの使用中止記録や媒介契約書の写しなど、「空き家であった証拠」を求められるケースがあります。
書類の不備で申告期限に遅れないよう、税理士などの専門家へ相談しながら進めると安心です。
2024年(令和6年)改正で相続空き家の売却はどう変わった?

2024年1月1日以降の譲渡を対象に、利便性の向上と一部の制限を目的とした大きな改正が行われました。主な変更点は以下の2点です。
売却後の解体・耐震改修でも適用可能に
これまでは、売却する「前」に耐震リフォームや解体を終える必要がありました。
しかし改正後は、売買契約の締結後、譲渡した翌年の2月15日までにこれらを完了すれば特例を受けられるようになりました。
これにより、「古い家付きのまま売り出し、買い手が決まってから更地にする」といった、より柔軟な取引が可能です。
相続人が3人以上の場合は控除額が変更
一つの空き家を3人以上の相続人で分割して売却する場合、1人あたりの控除額が従来の3,000万円から2,000万円へと引き下げられました。
多人数で共有している場合は注意が必要です。
【ケース別】相続人が複数いる場合の控除額計算

「空き家特例」は、相続人が複数いる場合でも一人ひとりに適用されます。
以前は相続人の人数に関わらず、一人あたり最大3,000万円の控除が可能でした。
例えば兄弟3人で均等に相続し9,000万円の売却益が出た場合、全員が上限まで控除を受ければ税額をゼロにできました。
しかし2024年の改正で、相続人が3名以上の場合は、一人あたりの上限が2,000万円に引き下げられたことにより、先の例では合計控除額が6,000万円に留まり、残りの3,000万円には課税されることになります。
この制限により、家族構成によっては増税になるケースもあるため注意が必要です。
相続税の取得費加算特例との併用はできる?

「空き家特例」と並んでよく検討されるのが、支払った相続税の一部を売却益から差し引ける「相続税の取得費加算特例」ですが、残念ながらこれら二つの特例を同時に利用することはできません。
どちらか一方を選択して適用することになります。
一般的には、最大3,000万円を直接差し引ける空き家特例の方が、最終的な税額を抑えられるケースが多いといえます。
しかし、もともとの売却益がそれほど大きくない場合や、支払った相続税が非常に高額な場合には、取得費加算の方が有利になる可能性も否定できません。
どちらの制度を選ぶべきかは、実際の売却額や納税額をもとにシミュレーションを行い、節税効果を慎重に比較することが重要です。
まとめ
空き家特例は、相続した実家を売却する際に非常に大きな節税効果をもたらす制度です。
最大3,000万円の控除が適用されるかどうかで、最終的に手元に残る現金は数百万円単位で変わります。
しかし、1981年以前の建築であることや売却価格が1億円以下であることなど、満たすべき条件は多岐にわたります。
また、2024年の改正によって手続きの期限や相続人数による控除額の変化など、新たな注意点も加わりました。
要件を一つでも見落とすと、特例が受けられず思わぬ税負担が生じる恐れがあります。
そうした事態を防ぐためにも、売却を検討し始めた段階で早めに税理士や不動産会社などの専門家へ相談することをおすすめします。
