不動産投資の家賃収入が増えてくると、個人で行うよりも節税効果が高い会社の設立を検討する方が増えてくるでしょう。
また、今後も事業を拡大したいと考えている場合は、法人化した方が金融機関からの融資を受けやすいなど、さまざまな点で会社設立が心強い存在になります。
不動産投資家には“法人化する方”と“個人で経営する方”がいますが、法人化は株式会社だけではなく合同会社を設立するという選択肢もあります。
そこで本記事では、不動産投資で合同会社を設立するメリットとデメリットを紹介します。法人化を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも合同会社とは
2006年の会社法改正により新しく設けられた合同会社は、出資をしたすべての社員に会社の決定権がある持分会社です。
株式会社とは違い、合同会社には所有と経営の分離がありません。
合同会社には社員全員に業務執行権と代表権があるのに対して、株式会社は出資者である株主と経営を行う取締役の役割が明確に切り離されています。
株式会社と合同会社では経営の主体が異なるため、出資者全員の決議で経営判断が決まる株式会社よりも、よりスピーディーな意思決定を実現できます。
以下の記事では、不動産投資で法人化するメリット、デメリット、タイミングを詳しく解説していますので、こちらも合わせてご覧ください。
⇒不動産投資で法人化するタイミングは?5つのメリットとデメリット
不動産投資を合同会社でする5つのメリット
不動産投資で家賃収入が増えてくると、個人ではなく法人化した方が節税効果が高いため、会社を設立した方がいいのではないかと悩む方は多いでしょう。
前述の通り、会社設立には株式会社だけではなく合同会社という選択肢があります。ここからは、合同会社を設立するメリットを詳しく紹介します。
設立費用が安い
不動産投資で合同会社を設立するメリットの1つ目は、設立費用の安さです。
- 合同会社⇒定款印紙代(4万円)+登録免許税(6万円)=10万円
- 株式会社⇒定款印紙代(4万円)+認証手数料(約5万円)+登録免許税(15万円)=約24万円
会社設立時に不可欠な定款とは、会社名や所在などをまとめたものです。株式会社の場合は紛失や改ざんリスクを避けるため、定款を公証人に認定してもらわなければいけません。
登録免許税も、合同会社が6万円なのに対して株式会社は15万円なので大きな違いがあります。
ちなみに、合同会社も株式会社も同じ普通法人に分類されているため、税制上の違いはほとんどありません。そのため、設立費用が安い点は大きなメリットであるといえます。
ランニングコストが安い
不動産投資で合同会社を設立するメリットの2つ目は、ランニングコストの安さです。
合同会社には役員の任期がありません。対して株式会社は役員に任期があるため、改選ごとに法務局での役員変更登記が必要であり、毎期終了後には決算公示義務が課せられています。
役員変更登記には登録免許税が1万円、決算公告は最低でも7万円の費用がかかります。これらは株式会社では義務ですが、合同会社では必要のない出費となります。
自由に経営できる
不動産投資で合同会社を設立するメリットの3つ目は、自由な経営ができる点です。
株式会社は出資比率により利益配分が決まりますが、合同会社では出資比率に関係なく自由に利益を配分することができます。
不動産投資では、法人化することで得られる節税効果はもちろん、家族や配偶者を社員にして自由に報酬額を決められるという点が大きなメリットになります。
会社の定款も株式会社に比べて自由度が高いため、自分の思い通りに経営することが可能です。
損失の繰り越しが可能
不動産投資で合同会社を設立するメリットの4つ目は、損失の繰り越しが可能な点です。
合同会社では最大で10年間は損失を繰り越すことができるため、家賃収入で黒字であっても過去の損失と相殺して法人税を抑えることができます。
ちなみに、欠損金の繰り越し控除は個人事業主でも受けられますが、最大で3年間となるため法人と比較すると期間が短くなります。
設立に手間がかからない
不動産投資で合同会社を設立するメリットの5つ目は、会社設立に手間がかからない点です。
前述の通り、株式会社と合同会社は同じ普通法人なので税制上の違いはありませんが、設立に関しては圧倒的に合同会社の方が手間がかかりません。
株式会社の設立は公証人による定款認証の手続きが不可欠なので、スケジュール調整なども考えると期間は3日から10日は必要です。
一方で合同会社には公証人が不要なので、最短1日で設立できます。また、書類や資本金の払い込み作業に関しても違いがあるため、合同会社の方が手間なく設立できます。
不動産投資を合同会社でする3つのデメリット
ここからは、不動産投資で合同会社を設立するデメリットを紹介します。
株式会社よりも信用度は低い
不動産投資で合同会社を設立するデメリットの1つ目は、株式会社よりも信用度が低い点です。
合同会社の件数は増えているものの、株式会社よりも認知度は低いです。そのため、合同会社というだけで信用度が低くなる傾向があります。
不動産投資のために設立するのであれば信用度はあまり関係ありませんが、金融機関からの融資審査においては、株式会社よりも不利に働く可能性がないとはいえません。
社員同士の意見が割れるリスク
不動産投資で合同会社を設立するデメリットの2つ目は、社員同士の意見が割れるリスクです。
合同会社は社員が1円でも出資していれば平等に決定権があるため、社員同士で意見が割れて考えに相違が生まれた際は対立関係に発展するリスクがあります。
株式会社では出資比率により決定権に明確な違いが生まれるため、合同会社のメリットがデメリットになる可能性もあるということは把握しておきましょう。
とはいえ、不動産投資では社員が自分だけ、あるいは家族や配偶者のみというケースが多いため、そこまで社員同士の対立リスクは考える必要はないといえます。
資金調達の方法が限定される
不動産投資で合同会社を設立するデメリットの2つ目は、資金調達の方法が限定される点です。
株式会社では株式を発行して資金を集めることができますが、合同会社ではそれができないため、資金調達の方法は融資、補助金、助成金に限定されます。
しかし、そもそも不動産投資の場合は金融機関から融資を受けて資金調達をするのが一般的なので、投資家から資金を集められない点は大きなデメリットとはいえません。
不動産投資で事業を拡大したいと考えている場合は株式会社、金融機関から受けられる融資の範囲で拡大したいと考えているのであれば合同会社で十分です。
まとめ
不動産投資で設立する会社を合同会社にするメリットとデメリットを紹介しました。
不動産投資で法人化するメリットは節税対策、融資を受けやすくなる、経費として計上できる範囲が広がるなどさまざまあります。
さらに合同会社の場合は、株式会社と比較して設立費用が安く手間がかかりません。
それでいて受けられる税制上の違いはありませんので、そこまで事業規模の拡大を考えていないのであれば、合同会社でも十分に多くのメリットを享受できるはずです。
家賃収入が増えてきたので会社を設立して節税したいと考えている方は、合同会社のメリットとデメリットを踏まえたうえで、株式会社とは違う選択肢として検討してみてください。