相続した不動産を売却した時にかかる税金を知っていますか?
ただでさえ不動産売却というワードでさえも聞いたことがある人は少なく、ましてや経験したことがある人はほとんどいないですよね。相続した不動産を売却する時にかかる税金について、詳しく知っているという方は少ないはずです。
この記事では相続した不動産の売却時にかかる税金について詳しく解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
相続不動産の売却時にかかる税金の種類
まずは、相続した不動産を売却するときにかかる税金について詳しく紹介していきます。
相続税
相続税は、相続によって取得した価格が基礎控除額を超える場合に発生する税金です。基礎控除額の計算方法は以下の通りです。
例えば、夫がなくなって妻、長男、次男で5,000万円の遺産を相続する場合の相続税は
3,000万円+3人×600万円=4,800万円
このようになります。遺産の5,000万円から基礎控除額を引くと200万円残りますので、これを法定相続分で分配し、納税額を割り出した総額の20万円が相続税いうことになります。
相続した金額が基礎控除額を下回った場合には、相続税は発生しません。
相続税以外にかかる5つの税金
相続した不動産を売却する時には、相続税以外にも5つの税金がかかります。不動産売却時にかかる税金について、以下で解説していきます。
登録免許税
登録免許税とは、相続した不動産を自分名義に変更する相続登記をする際にかかる税金です。税率は不動産価格の1,000分の4(=0.4%)と定められています。
印紙税
印紙税とは、不動産売買の際に必要な売買契約書に課される税金です。契約書に収入印紙を貼り付ける形で納税します。
● 500万円〜1,000万円⇒10,000円
● 1,000万円〜5,000万円⇒20,000円
● 5,000万円〜1億円⇒60,000円
● 1億円〜5億円⇒100,000円
契約金額により印紙税の税額は変わりますが、契約金額により2,000円〜10万円となっています。また、令和4年3月31日までは、軽減措置で税額が低くなっています。
譲渡所得税
譲渡所得税とは不動産を売却して得た利益に対して課される所得税のことで、相続した不動産の所有期間によって税率が変化します。
不動産の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた額に、以下の税率を加算して計算します。
所得期間が5年以下だった場合は短期譲渡所得税として30%、5年を超える場合は長期譲渡所得税として15%の税率で計算します。
これらの単語の意味を、以下にまとめました。
譲渡所得 | 課税の対象となる金額のこと |
譲渡収入金額 | 売却して得た金額のこと |
取得費 | 不動産を取得するのにかかった費用のこと |
譲渡費用 | 不動産を売るためにかかった費用のこと |
住民税
住民税の税率は、譲渡所得税と同様、所有期間によって異なります。所有期間が5年以下だった場合は9%、5年を超える場合は5%の税率で計算します。
復興特別所得税
東日本大震災の復興支援のため、必要な財源の確保をするための税金です。この復興特別所得税も、所有期間によって税率が異なり、譲渡所得税の税率に2.1%加算した税率になります。
所得期間による区分 | 所有期間 | 税率 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 所得税の税率30%×2.1%=0.63% |
長期譲渡所得 | 5年以上 | 所得税の税率15%×2.1%=0.315% |
相続する人が自分だけじゃなかった場合の税金
次に、不動産相続の際にトラブルになりやすい事例を一つ紹介します。それは、相続不動産を売却する時の相続人が、自分以外にもいる場合(親や兄弟など)です。
相続される財産の中でも特に価値が高い不動産の相続は、相続人の中でもトラブルになりやすく、かといって不動産を等分することもできませんよね。
そんな時に便利な方法は、売却して現金化してから法定相続分を利用して分け合うという方法で、これを換価分割と言います。
換価分割する手順は、以下の通りです。
- 相続人で換価分割することを共有する
- 代表者1名が相続登記をして、相続不動産の名義変更をする
- 相続不動産を売却し、現金化する
- 法定相続分で均等に分け合う
相続した不動産は、死亡している人の名義のままでは売却することができません。したがって、一度代表者の名義に変更してから売却を行う必要があります。
トラブルを減らすためにも、しっかりと話し合うことが大切です。
相続不動産を売却するときに使える特例・節税対策
次に、相続不動産を売却するときに使える特例と節税対策について紹介していきます。
相続不動産を売却する際に、自分が住んでいたのか、住んでいないのかで使える特例が変わってくるのが特徴です。それぞれの特例を利用することのできる条件を満たしていれば、大幅な節税対策をすることができるので、事前にチェックしておきましょう。
自分が住んでいない家を売却したときの特例
まず始めに、自分が住んでいない相続不動産を売却する時の特例を紹介していきます。
取得費加算の特例
相続税の申告期限から3年10ヶ月以内に売却すれば、所得額に売却した不動産に対する相続税額も加算することが可能となり、結果として税負担を軽くすることができます。
適用の条件は以下の通りです。
- 相続または遺贈によって取得した財産であること
- 相続時に相続税を納税していること
- 相続開始日から3年10ヶ月以内に売却していること
相続空き家の3,000万円特別控除
自分が住んでいない空き家を相続した場合、一定の要件を満たすと3,000万円控除を受けることができます。
対象となるのは、以下の条件です。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
区分所有建物登記とは、ひとつの建物が二つ以上に区切られていて、それぞれ別の所有者がいる建物の所有権のことです。分譲マンションなどが挙げられます。
自分が住んでいる家を売却したときの特例
続いては、自分が住んでいる相続不動産を売却した時の特例を紹介していきます。
居住用財産の3,000万円特別控除
自分の自宅など、住むことを目的とする不動産のことを居住用財産と言います。
その自分の住んでいるマイホームを売却した際に、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例のことで、所有期間の長さに関係なく適用することができます。
譲渡所得税の特別控除の中ではとても有名で、3,000万円まで控除できる制度になっているので、必ずチェクしておきましょう。
小規模住宅の特例
親と一緒に住んでいた家を相続した場合、建物ではなく土地に対しても特例を適用することが可能です。
こちらの制度は、3,000万円の特別控除と併用できるほか、土地の80%もの価格を減額することができるため、ぜひ利用しておきたい特例ですが、土地だけに適用されるものですので、その点は注意が必要です。
10年超所有の場合の軽減税率の特例
住んでいた家の所有期間が10年を超えている場合には、譲渡所得の税率を引き下げることができます。詳しい税率の計算方法は以下にまとめました。
6,000万円以下 | 6,000万円以上 | |
所得税 | 10.21% | 15.315% |
住民税 | 4% | 5% |
合計 | 14.31% | 20.315% |
平成21年または22年に取得した土地などの保有期間が5年以上の場合の1,000万円控除
以下の条件を全て満たす場合に、1,000万円の控除が受けられます。
- 土地を所得した時期が平成21年1月1日〜平成22年12月31日までであること
- 所得期間が5年以上であること
- 親族等特別な関係の人から取得した土地でないこと
- 相続・贈与・交換により取得した土地でないこと
なお、上記の3,000万円の特別控除との併用はできませんのでご注意ください。
まとめ
相続した不動産を売却した時にかかる税金の種類や計算方法について紹介しましたが、参考になりましたか?
不動産の相続も売却も、人生で何度も発生するイベントではありません。そのため、相続不動産を売却する際は、しっかりとした知識が必要です。
相続した不動産の売却を考えている方は、ぜひこの記事を参考にして、少しでも税金の負担を軽くしましょう。