一般的に住宅ローンの返済期間は35年とされていますが、近年では50年ローンという超長期ローンが登場し、利用者が増えていると言われています。
しかし、50年ローンは本当に魅力的な選択肢なのでしょうか?それとも、大きなリスクを伴うものでしょうか?
この記事では、50年ローンのメリットとデメリットについて詳しく説明し、どのような方におすすめできるのか、またはおすすめできないのかを解説します。
さらに、50年ローンを検討する際の注意点についても触れています。最後まで読んで、後悔のない住宅購入の参考にしてください。
50年の住宅ローンとは?詳しく確認

50年ローンとは?
50年ローンとは、住宅ローンの返済期間が最長50年間に設定されているものです。
一般的な35年ローンと比べて返済期間が長く、月々の返済額が抑えられるのが特徴です。
このローンは、若年層や低所得者層の住宅購入を支援し、住宅市場を活性化させることを目的として誕生しました。
特に若年層にとっては、住宅購入のハードルが非常に高くなっているのです。
そのため、返済期間を長くすることで月々の返済額を抑え、より多くの人々が住宅を購入できるようにするために50年ローンが誕生しました。
2023年8月にネット銀行も取扱を開始
50年ローンは、2009年に住宅金融支援機構が民間機関と提携して提供する住宅ローン「フラット35」が「フラット50」として50年返済のローンを取り扱い始めたことで誕生しました。
その後、2010年代半ばから地方銀行を中心に50年ローンを取り扱う機関が増加しました。さらに、2023年8月にはネット銀行も50年ローンの取り扱いを開始し、普及が進んでいます。
まだ50年ローンを取り扱う金融機関は限られていますが、利用者は増加傾向にあります。
50年住宅ローンのメリット

返済負担が軽減される
50年間にわたる返済期間のおかげで、月々の返済額が大幅に抑えられます。
これにより、若年層や低所得者層でも無理なく住宅を購入しやすくなり、他の生活費や貯蓄に充てる余裕も生まれます。
例えば、4,000万円の物件を金利1%で借りた場合、月々の返済額は以下の表のように変わります。
この例では、約2.8万円の月々返済額の圧縮が可能であり、これは大きなメリットと言えます。
ローン年数 | 月々返済額 |
35年 | 112,914円 |
50年 | 84,743円 |
資金計画が立てやすい
長期間にわたる返済計画を立てることで、将来のライフプランに合わせた柔軟な資金計画が可能になります。
特に若年層の方は、結婚、出産、子育て、老後資金の貯蓄など、大きな出費が控えています。
このように、将来の資金が不透明な状況の中で、大きな出費の一つである居住費を抑えることができるのは大きなメリットです。また、収入に余裕が生まれた際には、一部繰上げ返済を行い、返済期間を短縮することも可能です。
短いローンを長くすることはできませんが、初めに長い返済期間に設定しておけば、余裕ができたときに返済期間を短縮することができるため、状況に応じて柔軟に対応することができます。
収入が減ってしまった際のリスクを軽減できる
月々の返済額を安く抑えることで、収入が減少した場合でも返済が可能な安心感があります。
将来、転職によって一時的に収入が減ることや、子供が生まれて子育てに時間を割くことで働く時間が限られ、収入が減ってしまうことも考えられます。
しかし、月々の返済額が抑えられていれば、こうした状況でも安心して返済を続けることができます。
50年住宅ローンのデメリット

総返済額が増える
長期間の返済により、総返済額が大幅に増加する可能性があります。
利息の負担が大きくなるため、結果的に高額な返済が必要になる点には注意が必要です。例えば、4,000万円の物件を金利1%で借りた場合、総返済額は以下の表のように変わります。
この例では、総返済額が約340万円も増加しますので、その差は決して小さくはありません。
ローン年数 | 総返済額 |
35年 | 47,423,997円 |
50年 | 50,846,203円 |
若年層・築浅の物件に限られる
多くの金融機関では、完済年齢を最高で「80歳まで」としているため、50年ローンを利用できるのは30歳未満の方に限られます。
年齢によって返済期間を50年より短く設定することも可能ですが、50年ローンのメリットを十分に受けるためには30代前半までの方が対象になります。
木造戸建て住宅やすでに古いマンションを購入する際は、建物の寿命も考慮することが重要です。
購入する物件が古い場合、50年後に老朽化が激しくなり、使用できなくなる可能性も考慮する必要があります。
残債の減りが遅く売却できない可能性がある
返済期間が長くなると、それだけ残債の減りも遅くなります。
そのため、50年という長期間にわたるローン返済中に、不動産の価値が大きく変動するリスクがあります。
もし不動産価格が下落し、ローン残債よりも安くなってしまうと、売却することが難しくなります。
特に新築など価格の下落幅が大きい物件の場合、ローン残債の減少が追い付かないケースが多くなるので、10年程度の短期間で売却する可能性が高い場合は注意が必要です。
50年住宅ローンの注意点

● 金利タイプ(固定金利・変動金利)の選択
● 契約時の年齢制限に留意すること
● 不動産の価値変動リスクに備えること
50年ローンは月々の返済額を抑えることができ、多くの若年層の方の住宅購入のハードルを下げる魅力的な選択肢です。しかし、金利の変動リスクや不動産価格下落リスクが35年ローンに比べると大きくなるため、注意が必要です。
特に50年ローンは超長期になりますので、返済計画は慎重に考える必要があります。
資金的にギリギリに計画してしまうと、金利変動で返済が難しくなる場合もありますので、余裕を持った返済計画を立ててください。
返済計画だけでなく、老後までの長期的なライフプランを考え、50年ローンのメリットの恩恵を受けることができるかどうかを検討することが大切です。
50年住宅ローンをおすすめする人

● 柔軟な資金計画を立てたい人
● 計画的な貯蓄や資産運用をしたい人
50年ローンは、収入や貯蓄が少ない若年層にとって、月々の返済額を抑えられる力強い味方です。
住宅ローンの返済額を抑えられることで、その分将来のための貯蓄や投資に回すことができます。
計画的な貯蓄や資産運用で余裕ができた場合、教育資金や一時的な大きな出費に充てることができます。さらに、手元に余裕資金があれば、資産運用によって増やすことも可能です。
増えた余裕資金で繰り上げ返済を行い、返済期間を短縮することもできます。
計画的かつ柔軟な資金計画を立てたい若年層の方には、50年ローンはおすすめの住宅ローンです。
50年住宅ローンをおすすめしない人

● 高額な総返済額を避けたい人
● 身の丈以上の物件を購入したい人
50年ローンは、そもそも返済期間が一般的な35年の住宅ローンと比較しても非常に長いため、長期間の返済に抵抗がある方や総返済額を抑えたい方にはおすすめできません。
50年ローンは、返済期間を長くすることで月々の返済額を抑えることができますが、そのため身の丈に合わない高額な物件を購入することも可能です。
しかし、金利が上昇したり、収入が減ってしまう場合には返済が厳しくなることがありますので、特に50年ローンは慎重な返済計画が必要です。
「とりあえず良い物件が、月々の返済が安く買える」というだけの軽い気持ちで飛びつくのは危険です。
まとめ
50年住宅ローンは、返済負担の軽減や安定した資金計画を求める人にとって有力な選択肢です。しかし、総返済額の増加や不動産価値の変動リスクなどのデメリットもあるため、慎重な検討が必要です。
自分のライフスタイルや将来の計画に合わせて、最適な選択をすることが重要です。