宅建資格は宅地建物取引士資格の略称で、毎年20万人前後の受験者数を誇る国内最大規模の国家資格です。
不動産の取引で使う資格になるため、個人で行う不動産投資でも宅建資格が必要なのではないかと考えている方はいるのではないでしょうか。
結論からいうと、不動産投資に宅建資格は必要ありません。しかし、一部の取引では宅建資格が必要になる場合があるため注意が必要です。
この記事では、不動産投資で宅建資格が必要になるケースと、取得していることで受けられるメリットを詳しく紹介します。
不動産投資に宅建資格は不要だが強みにはなる
冒頭で説明した通り、不動産投資に宅建資格は必要ありません。
アパートやマンションを購入し、入居者からの家賃が収入となる不動産投資ですが、そもそも不動産の購入や売却に資格は不要です。
また、入居希望者と契約する際の重要事項説明は、委託している不動産会社が行うため、個人で宅建資格を所有している必要はありません。
● 重要事項説明書の記名/押印
● 契約書の記名/押印
入居希望者への重要事項説明だけではなく、契約書の記名・押印も宅建士の独占業務ですが、いずれも委託する不動産会社が行うのが一般的です。
入居者募集や仲介業務も宅建業に含まれますが、宅建業の免許を有する不動産会社へ委託すれば問題ないため、一般的な不動産投資に宅建資格は不要となります。
不動産投資で宅建資格が必要になるケース
前述の通り、アパートやマンションを購入し、入居者からの家賃で収入を得る不動産投資では宅建資格が必要になることはありません。
しかし、所有資産の処分目的ではない短期間かつ継続的な物件の売買を行う場合は、個人でも事業と判断され、宅地建物取引業法違反となる可能性があります。
宅建業に該当する行為を行うには宅建資格を有している必要があるため、自身で建物の売買をする場合などは、不動産賃貸業の枠を超えていないかを考慮しなければいけません。
とはいえ現時点では、不動産投資における売買で宅建資格が必要であるとの法律はありません。
現物の不動産を売買して利益を得るキャピタルゲインは、事業性が高いと判断される要因になるリスクがあるため、宅建資格が必要になる場合があると覚えておきましょう。
不動産投資のために宅建資格を取得する5つのメリット
不動産投資における宅建資格は、必須ではありませんが大きな強みになります。ここからは、宅建資格を取得するメリットを5つ紹介します。
信頼度の向上
個人で不動産投資を行う場合、どうしても企業と比較して信頼度が低くなります。
しかし、国家資格の宅建資格を持っていれば、客観的な観点から不動産に関する知見があることを証明することができます。
そのため、金融機関からの信頼を得やすくなる効果が期待でき、専門的な不備等を指摘できるため、購入時の交渉も有利に進めることが可能です。
取引相手からの信用度が高いということは、万が一の違法な取引やトラブルを未然に回避できることにも繋がるため、有利に契約を進めやすくなるでしょう。
法規制に関する知識が身に付く
宅建資格を取得することで、不動産売買における法令上の制限、税金や建築上の法令、建築基準法や権利関係など、不動産投資に通じるさまざまな知識が身に付きます。
不動産には、前面道路や用途地域、高度規制などの法令上の制限から、抵当権や瑕疵担保責任などの権利関係まで、さまざまな法律が複雑に絡んでいます。
これらの知識は宅建資格を勉強している時に身に付くため、不動産投資の購入予定物件が法令に則り建てられているかを自身の判断で精査できます。
それに伴い、重要事項説明の内容に対する理解も深まるため、購入すべき物件か否かの判断がよりしやすくなるといえるでしょう。
出口戦略を練りやすくなる
不動産投資における主な出口戦略は、キャピタルゲインを狙い、保有している物件を購入時より高値で売却することです。
他には、建物が古いなどの理由で売れない場合は更地にして売却したり、自己居住用に売却するなど、さまざまな出口戦略が挙げられます。
しかし、いずれの場合でも重要になるのがタイミングです。
宅建資格を有していることで、不動産に関する専門的な知識が身に付くため、出口戦略を練りやすくなるメリットがあります。
また、自身が宅建資格を持っていれば不動産会社へ必ずしも仲介依頼をする必要がないため、手数料を支払う必要がなくなり収益向上が見込めます。
根拠を伴った判断ができるようになる
不動産投資における判断に根拠が生まれる点も大きなメリットです。
前述の通り、宅建資格を勉強すれば法規制や不動産に関する専門的な知識が身に付くため、内容を深く理解したうえで投資用物件を精査することができます。
「こういう理由だから今が売却する時」「こういう条件だから購入するべき」という判断に根拠が伴うため、高い精度で最適な投資用物件を選定することが可能です。
また、セミナーや投資用物件資料に書かれている専門用語も理解できるため、受け身になりすぎずに自身の判断で決定することができるようになります。
起業や転職などの選択肢が生まれる
宅建資格を取得していれば、起業や不動産会社への転職など、さまざまな選択肢が生まれるメリットがあります。
自身で投資用物件を管理するための会社を起業すれば、これまで仲介を依頼していた物件探しや売買仲介などを自らで行えるため、仲介手数料を削減することが可能です。
また、短期間かつ継続的な物件の売買により宅地建物取引業法違反に違反する可能性も、自身が宅建資格を保有し起業していればクリアできます。
宅建資格を取得するための勉強法
受験資格に制限がなく誰でも受けられる宅建資格ですが、出題範囲が広いため簡単に取得できる資格ではありません。
合格者数は毎年約3~4万人、合格率は15~18%の間で推移しており、令和4年度の最新の合格率は17%でした。
これから宅建資格を取得しようと考えている方は、以下の方法で勉強することおすすめします。
● 通学講座
● 通信講座
簡単に取れる資格ではありませんが、宅建資格は独学でも取ることが可能です。
宅建資格は非常に人気が高い資格であるため、数多くの市販教材が販売されています。また近年では、インターネットで情報を集め、アプリで過去問を解くこともできます。
独学以外の方法では、専門学校へ通う、通信講座へ申し込むなどの方法が挙げられます。
いずれも独学よりも費用はかかりますが、不明点を先生へ聞ける点や、何をどのように進めればいいかが明確であるため、勉強を進めやすくなります。
不動産投資のために宅建資格を取得しようと考えている方は、ぜひ上記で紹介した方法を使い、勉強を進めてみてください。
まとめ
不動産投資に宅建資格が必要なケース、取得するメリット、宅建資格を取得するためのおすすめの勉強法を紹介していきました。
購入したアパートやマンションを人に貸し、家賃から収入を得る不動産投資では宅建資格は必要ありません。
宅建資格が必要な重要事項説明などは、委託している不動産投資が行ってくれるため、資格がなくとも不動産投資は行えます。
しかし、信頼性の向上や法規制に関する知識が身に付くなどの点から、宅建資格は必須ではないが強みにはなるというのが結論です。
宅建資格は簡単に取れる資格ではありませんが、勉強をするだけでも知識は身に付くため、不動産投資で損になることはありません。
通学や通信だけではなく、さまざまな参考書を読みながら独学でも勉強を進められるため、ぜひこの機会に取得を検討してみてはいかがでしょうか。