マンションを購入する際、住宅ローンのほかに頭金を用意しなければならないことはよく知られています。
しかし、頭金の必要性や用意すべき金額について、具体的なイメージを持っている方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、マンション購入時に必要な頭金について詳しく解説します。頭金について疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
頭金が必要な理由とは
マンション購入時に頭金を支払う理由は、全部で3つあります。
総返済額と月々の返済額が減る
頭金を支払うと、住宅ローンの借入額が減ります。そのため、返済総額が少なくなり、月々の返済負担も軽くなります。
頭金を支払うことで、将来の返済リスクが軽減されるため、できるだけ頭金を多く支払うことが望ましいといえます。
住宅ローンの金利が低くなる
住宅ローンの金利は金融機関によって異なります。一般的に、頭金の割合が多いほど住宅ローンの金利は低くなる傾向にあります。
これは、頭金を支払うことで借入額が減るため、金融機関が貸し手としてのリスクを軽減できるからです。金融機関によっては、頭金の割合によって金利が異なる住宅ローン商品を提供しています。
例えば、頭金が10%以上の場合、金利が優遇されるように設定されている場合があります。また、住宅ローン商品によっては、頭金を支払うと固定金利になるものもあります。
これは、頭金を支払うことで金融機関の貸し手としてのリスクが軽減され、長期的に金利が安定するからです。頭金を支払うと金利が下がる分、長期的には返済総額が減るためメリットがあります。
ただし、頭金の割合で金利が変わらない場合もあります。
そのため、住宅ローンを検討する際には金利だけでなく、その金利が適用される条件も確認することが大切です。
金融機関の審査に通りやすくなる
頭金を準備することで、金融機関に返済能力をアピールでき、融資が通る可能性が高まります。
また、金融機関の貸し手としてのリスクが軽減されるため、借入条件が有利になる可能性もあります。
頭金がなくても住宅を購入することは可能ですが、返済負担が大きくなり、将来の返済リスクが高まります。
頭金を支払うことで将来の返済リスクを軽減できるため、頭金はできるだけ多く支払うことをおすすめします。
マンション購入で準備すべき頭金の平均額
2022年8月に発表された「フラット35利用者調査」によると、マンション購入価格の全国平均は4,528万円で、頭金の平均は785万円です。
三大都市圏だけに絞ると平均購入価格は4,718万円で、頭金の平均は818万円となっています。
これらのデータから、マンション購入時には平均して物件価格の約1.70%の頭金が準備されていることがわかります。
また、頭金は住宅ローンの返済額や総返済額にも大きく影響します。頭金が多いほど借入額や返済額が少なくなり、借入リスクが低くなります。
頭金が多いほど住宅ローンの金利が低くなり、返済期間も短くなる傾向にありますが、頭金が少なければ借入額が増えるため返済額も増え、返済期間も長くなる傾向があります。
さらに、住宅ローンの金利が高くなるため、総返済額も増えます。そのため、自分に合った頭金の額をよく検討することが大切です。
頭金は、マンションの引き渡し時に一括で支払うのが一般的です。ただし、申込証拠金や手付金として販売会社に支払う場合もあります。
これらのお金は頭金に充当されます。頭金を準備する際には、マンション購入の流れを理解し、計画的に準備することが重要となります。
頭金を用意するメリット
頭金がなくても住宅ローンを借りることは可能ですが、頭金を用意することにはさまざまなメリットがあります。
ここでは、頭金を用意する具体的なメリットを詳しく紹介します。
住宅ローン利息の軽減
住宅ローンは長期間にわたって借り入れを行うため、利息の支払いが大きな負担になります。しかし、頭金が多ければ多いほど、住宅ローンの借入額を減らすことができます。
借入額が少なければ、支払う利息も少なくなります。つまり、頭金を用意することで、住宅ローンの返済負担を軽くすることができるというわけです。
頭金の額 | 借入額 | 金利 | 返済期間 | 元利均等返済の返済額 | 節約できる利息額 |
なし | 5,000万円 | 1.5% | 35年 | 6,430万円 | – |
100万円 | 4,900万円 | 1.5% | 35年 | 6,401万円 | 29万円 |
500万円 | 4,500万円 | 1.5% | 35年 | 6,287万円 | 143万円 |
1,000万円 | 4,000万円 | 1.5% | 35年 | 6,144万円 | 286万円 |
返済期間の短縮
住宅ローンは長期にわたって返済するため、将来の不安やリスクも大きくなります。例えば、収入が減ったりなくなったりした場合や、金利が上昇した場合などです。
こうした不安やリスクを軽減するためには、返済期間を短くすることが有効です。返済期間が短くなれば支払う利息も少なくなり、将来の変動にも対応しやすくなります。
頭金を用意することで返済期間を短くすることができます。前述の例で考えてみましょう。
5,000万円のマンションを35年ローンで購入した場合、毎月の返済額は15万3,092円です。
この場合、頭金を1割(500万円)用意すれば、同じ返済額でも約32年9カ月で完済できます。つまり、約2年3ヶ月早く完済できることになります。
同様に、頭金2割(1,000万円)の場合、約30年3カ月で完済できます。
金利が下げられる
住宅ローンの金利は借入額や返済期間だけでなく、頭金の割合によっても変わります。一般的に、頭金の割合が高いほど金利は低くなります。
これは、金融機関が頭金が多い人を返済能力や信用力が高いと判断して優遇するためです。
例えば、フラット35の2022年8月の実行金利では、頭金10%未満で1.79%、頭金10%以上で1.530%(いずれも返済期間21年以上35年以下)となります。
このように、頭金の割合によって金利に0.26%の差があります。同様に、民間金融機関でも頭金の割合に応じて金利が引き下げられる場合があります。
物件の選択肢が広がる
住宅ローンを利用する場合、借り入れできる金額の上限は、収入や借金などの状況によって決まります。
借入可能額を超える物件を購入することはできません。しかし、頭金を用意することで、借入限度額を超えても購入できる物件を増やすことができます。
つまり、頭金を準備することで、物件の選択肢を広げることができるのです。
例えば、借入金額が4,000万円だとします。この場合、4,000万円以下の物件しか購入できません。しかし、頭金を1割(500万円)用意すれば、4,500万円以下の物件を購入することができます。
同様に頭金を2割(1,000万円)用意すれば、5,000万円以下の物件を購入することができます。
予算オーバーであきらめていた物件や、同じマンションでも上層階や眺望の良い角部屋など、より希望に近い物件を手に入るかもしれません。
審査に通りやすくなる可能性がある
住宅ローンを申し込むと、金融機関による審査があります。
審査では、返済能力や信用力がチェックされます。審査に通らなければ、住宅ローンを借りることはできません。
審査基準は金融機関によって異なりますが、一般的には収入や勤続年数が重視されます。しかし、頭金の有無や金額も審査に影響します。
頭金を用意することで、計画的な貯蓄や自己責任で住宅を購入する姿勢をアピールできます。
その結果、返済能力や信用力が高いと評価され、審査に通りやすくなることもあります。
売却がスムーズになる可能性がある
マンションを購入しても、転勤や転職、家族構成やライフスタイルの変化などで売却が必要になる場合があります。
売却の際には、売却価格と住宅ローン残債の差額が重要になります。売却価格が住宅ローンの残債を上回れば利益が出るため、自己資金で完済できます。
しかし、売却価格が住宅ローンの残債を下回ると損失が発生し、自己資金で住宅ローンを完済できない可能性があります。
そこで、頭金を用意することで住宅ローンの残債を減らすことができます。残債が少なければ少ないほど、売却価格との差は小さくなります。
つまり、頭金を用意することで、売却時にローンを完済しやすくなるのです。また、金融機関が物件につけた抵当権を外すためには、ローンを完済しなければなりません。
抵当権がついたままの物件は売却が困難です。頭金を準備することで、抵当権を外しやすくなり、売却をスムーズに進めることができます。
お金を貯めることができる
頭金を用意するためには、家計を見直し、貯蓄を積み立てる必要があります。これを機に貯蓄力をつけましょう。
貯蓄力があれば、住宅購入だけでなく教育資金や老後資金など、人生の大きな出費にも対応できるようになります。
『人生の3大支出』と呼ばれる住宅・教育・老後資金は、それぞれ準備に時間がかかります。特に教育費は早めに貯めておかないと、将来大きな負担になります。
そこで住宅ローンを借りるときに頭金を準備して返済額を少なくしておけば、その分を貯蓄に回すことができます。
まとめ
この記事では、マンション購入時の頭金のメリットと決め方について解説しました。
頭金とは、物件価格の一部を自己資金で支払うことで、住宅ローンの借入額を減らすことができる個人向けローンのことです。
頭金を支払うことで、利息や返済期間の軽減、金利や審査の優遇、物件選びや売却がスムーズになる、貯蓄力がつくなど多くのメリットがあります。
しかし、頭金は必ずしも必要ではありません。収入や支出、家計の状況、ライフプランなどを考慮し、適切な頭金を決めましょう。