不動産を売却する際には、消費税がかかる場合があります。
課税対象となる不動産の種類や、個人・法人で課税される税率の違い、納税手続きなどは、売却前にしっかりと把握しておくことが重要です。
この記事では、不動産売却の消費税に関する基礎知識を詳しく紹介します。
不動産売却で消費税が課税される対象
ここでは、不動産売却における消費税の課税対象について詳しく解説します。
課税事業者が行う建物の売買
課税事業者による建物の売買は消費税の課税対象です。課税事業者とは、法人や個人事業主など、消費税を納付する義務を有している者を指します。
例えば、建築会社が新築の注文住宅や建売住宅を売却する場合や、不動産会社が直接中古住宅を売却する場合には、売却代金に消費税が課されます。
また、不動産会社が買取として不動産を売買する場合も同様に消費税が課されます。ただし、売り手が誰であるかによって異なるため注意が必要です。
仲介手数料
不動産会社に不動産売買の仲介を依頼する場合、買い手と売り手の双方が仲介手数料を支払わなければなりません。
この仲介手数料は、不動産会社が提供するサービスに対する報酬であり、課税事業者である不動産会社に消費税が課されます。
不動産の売却価格が400万円を超える場合には、不動産会社に支払う仲介手数料は、「(売却代金×3%+6万円)+消費税」になります。
ただし、この速算式は上限であり、不動産会社に仲介手数料の減額を申し出ることで消費税の影響を抑えることもできます。
司法書士に支払う手数料
正確な不動産登記には、所有権の移転を記録する必要があります。不動産に抵当権が設定されている場合は、登記簿から抹消する必要があります。
登記簿から抹消された後、新しい所有者の名前が登記されます。不動産取引においては、抵当権抹消の手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士には、登記の手続きや必要書類の準備を代行してもらいます。
司法書士に支払う報酬は、登記手続きを代行するサービスの代金であるため、消費税の課税対象となります。
住宅ローンの手数料
不動産の購入資金が不足する場合、住宅ローンを利用することが一般的です。
住宅ローン契約時には、金融機関が提供するサービスの対価として事務手数料が発生します。この事務手数料には消費税が課されるため、課税対象となります。
また、不動産を売却する場合や、売却代金で住宅ローンの一括返済を行う場合も、一括返済用の手数料が発生します。一括返済用の手数料も消費税の課税対象です。
このように、不動産売買には消費税が課税される項目が多くあります。したがって、事前に何が課税対象となるかを理解しておくことが重要です。
課税される場合の消費税率
一般的に、不動産の売買には消費税が課税されます。消費税の課税率は、2019年10月1日以降、10%となっています。
不動産の売買代金に対して10%の消費税が課されるのが一般的ですが、一部の不動産には、8%の消費税が課される場合もあります。
これは、以下の条件をすべて満たす場合に適用されます。
- 住宅用地等の取得に係る取引
- 住宅用地等と住宅を同時に取得する場合
- 住宅用地等と建物を同時に新築する場合
これらの条件を満たす場合、消費税は8%で課税されます。しかし、この特例は一定の制限があり、以下のような場合には適用されません。
- 住宅用地等と建物を別々に取得する場合
- 住宅用地等と建物を同時に取得する場合でも、中古物件を取得する場合
- 建物のリフォーム・増改築などの工事を行う場合
上記に該当する場合は、一般的な10%の消費税が課税されます。
特別優遇措置を受けられる条件
ここでは、特別優遇措置を受けれる場合の条件について解説します。個人的な売却と法人・事業主が売却するケースについて確認しておきましょう。
個人的な売却のケース
個人が自己所有の不動産を売却した場合には、上記の課税率が適用されます。しかし、特定の条件を満たす場合には、特別優遇措置が適用されることがあります。
具体的には、以下の条件をすべて満たす場合には、課税対象額が減額される「特定の不動産等の譲渡に係る税制上の控除」が適用されます。
- 譲渡所得が2000万円以下であること
- 譲渡した不動産が、自己所有期間が5年以上であること
- 譲渡された不動産が、居住用財産または投資用不動産であること
この場合、課税対象額が最大で400万円まで減額されるため、実質的に消費税の負担が減ることになります。
法人や個人事業主で売却するケース
一方、法人と個人事業者の不動産売却においては、個人と異なり課税対象となる場合があります。
売却した不動産が「事業用不動産」である場合、消費税が課税されます。
しかし、個人と同様に特別優遇措置が設けられており、以下の条件を全て満たす場合には消費税が課税されません。
- 1年以内に購入した土地及び建物を売却する場合
- 売却対象の不動産が住宅用である場合
- 売却対象の不動産が自己居住用である場合
また、売却した不動産が事業用不動産である場合には、課税される消費税率が異なります。
2023年4月現在、法人や個人事業者が所有する事業用不動産の売却には、一般的に10%の消費税が課税されます。
個人が自己所有の不動産を売却した場合にかかる消費税
一般的に、個人が自己所有の不動産を売却した場合には、売却価格に消費税がかかります。
しかし、売却対象となる不動産が住宅用地や住宅建物の場合、以下の特別優遇措置があるため、消費税がかからない場合があります。
住宅用地の場合
売却時期から5年以内の自己居住用地の場合、消費税が課税されないことがあります。
しかし、土地の面積が2000平方メートルを超える場合や、家屋の建築が禁止された区域に位置する場合には、この優遇措置は適用されません。
住宅建物の場合
建築後2年以内の自己居住用住宅建物の場合、消費税が課税されないことがあります。
しかし、住宅建物が複数ある場合や、建築後2年以上経過した場合には、この優遇措置は適用されません。
消費税の申告・納付方法
不動産売却に伴い、消費税が発生した場合には申告と納付が必要となります。
消費税の申告は確定申告によって行われ、個人事業主は翌年3月末日までに、法人は課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内に税務署へ申告・納付することが一般的です。
なお、直前の課税期間の消費税の額が48万円を超える場合には、中間申告と中間納付が義務付けられます。
納付方法は以下の通りです。
- 窓口での現金支払い
- 口座引き落とし
- インターネットバンキング
- クレジットカード決済
- コンビニでの納付
- e-Taxでのダイレクト納付
不動産売却で発生した消費税の帳簿処理については、「仮受消費税」という勘定科目を使用します。しかし、売却益が生じている場合には、土地と建物の両方を計上する必要があります。
消費税の納付に関しては、中間申告と中間納付を忘れずに行い、余計な税金がかからないように注意しましょう。
また、節税方法には、不動産の一部譲渡や特例措置の活用などがあります。税務署に相談しながら、適切な節税対策を取りましょう。
まとめ
この記事では、不動産売却における消費税に関する基礎知識をまとめて紹介していきました。
不動産の売却にはさまざまな税金がかかりますが、消費税の申告・納付方法や、不動産売却で発生した消費税の仕訳方法について把握しておくことが大切です。
不動産会社には税務に関する知識が豊富にあるため、不安な点があれば相談してみるとよいでしょう。
不動産売却の消費税に関する不安を抱えている方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。