相続したマンションを売却すると、相続税の納税資金を確保したり、遺産分割を円滑に進めることができます。
しかし、相続したマンションを売却すると譲渡所得税などの税金がかかるため、不動産を売却する際には税金の知識が不可欠です。
税金がいくらかかるのか、どのような特例があるのか、特例を適用するための要件は何かなどを知らないままで売却すると、不利益を被る可能性があります。
この記事では、相続したマンションを売却する際にかかる税金と、相続したマンションを売却する際に利用できる特例について紹介します。
相続したマンションの売却を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
相続したマンションの売却でかかる税金
相続したマンションを売却する際には、印紙税、譲渡所得税、住民税の3つの税金がかかります。ここでは、それぞれを詳しく解説します。
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書を作成する際に課税される税金で、契約書に記載された売買価格に応じて段階的に税額が増えていきます。
親から相続したマンションを売却する場合は、契約書に印紙を貼って消印することで印紙税を納めます。契約書の原本(印紙を貼って消印したもの)を1部コピーする方法が一般的です。
譲渡所得税及び住民税
親から受け継いだマンションを売却する場合、譲渡所得税と住民税の2つの税金がかかります。譲渡所得税は売却益に対して課税される税金で、住民税は所得税に上乗せされる地方税です。
収入金額
不動産売買契約書に記載された売買代金に、買主が納付すべき固定資産税・都市計画税の未納分を加算した金額が収入金額となります。
取得費
親から相続したマンションの場合、親が代金や手数料を支払った金額に、相続人が相続時に支払った登記費用や登録免許税などを加えた金額が取得費となります。
ただし、遺産分割に関する訴訟費用や弁護士費用は取得費に含まれません。
一方、親から相続した不動産が土地の場合は、相続人が土地を相続した際に支払った登記費用や登録免許税等が取得費に加算されます。
また、親が土地を購入したときの購入代金や購入手数料、相続人が土地を相続したときに支払った登記費用や登録免許税などの金額も取得費に含まれます。
譲渡費用
譲渡費用とは、不動産の売却に直接かかった費用(仲介手数料、測量費など)のことです。
特別控除
相続した実家を売却する場合、特別控除が適用される場合があります。まず、譲渡所得に対して50万円の特別控除が受けられます。
また、親から相続した実家を相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日(通常は死亡の日から3年10ヶ月)までに売却した場合には、一定の方法で計算した相続税額を取得費に加算できます。
税率
譲渡所得税と住民税は、年間所得金額によって税率が異なります。
譲渡益が500万円以下の場合、譲渡所得税の税率は15%、住民税の税率は10%です。譲渡益が500万円を超える場合、譲渡税率は20%、住民税率は15%です。
相続したマンションの売却で使える特例
相続したマンションの売却では、特別控除や取得費加算などの特例があるため、事前に知識を持っておくことが大切です。
相続財産譲渡時の取得費加算特例
相続財産を譲渡した場合の取得費加算特例は、相続財産を譲渡した場合に、譲渡所得の取得費に相続税額の一部を加算することができるというものです。
取得費が多ければ多いほど譲渡所得が少なくなり、税金が安くなります。取得費に加算できる相続税額は、下記の計算式で求めます。
相続税額×【相続税の課税価格の基礎となった財産の価額】÷【相続税の課税価格+債務控除額】
債務控除額とは、被相続人が残した借入金額や葬儀費用などのことです。相続財産の譲渡時の取得費加算の特例の適用要件は次のとおりです。
- 相続により取得した財産であること
- 相続税が課税されていること
- 相続税の申告期限から3年以内に売却すること
- 確定申告をしていること
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例は、相続税を納付している場合に限られます。また、相続から3年を経過している場合や相続税が非課税となっている場合は適用されません。
相続した空き家を譲渡した場合の3000万円特別控除
相続した空き家を譲渡する場合、所有期間の長短に関わらず相続人が譲渡する空き家に居住していれば、譲渡所得から3,000万円まで控除できます。
ただし、この特例を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 相続人が譲渡する空き家に住んでいたこと
- 売主と買主に親子関係や夫婦関係などの特別な関係がないこと
- 確定申告をすること
相続した空き家を譲渡する場合、まず譲渡所得を計算し、その譲渡所得から最高3,000万円まで控除する特別控除が適用されます。
この特別控除は売主に制限があるため、詳しくは税理士や司法書士に相談してみましょう。
相続したマンションを売却する流れ
ここでは、相続したマンションを売却する流れを詳しく紹介します。
相続方法の選択
相続人が複数いる場合には、遺産分割協議書を作成し、『現物分割』『代償分割』『換価分割』のいずれかを選択します。
現物分割は財産をそのまま分割する方法、代償分割は財産を現金等で均等に分割する方法、換価分割は財産を売却してその代金を分割する方法です。
遺産分割協議書は、公正証書にすることができ、遺産分割協議の証拠として認められます。
相続税の申告
相続したマンションの評価額に応じて、相続税が課税されます。相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内です。
相続税は、マンションを売却する前に納める必要があります。
相続登記
相続登記とは、不動産を相続した人が所有者として登記することです。相続登記をしなければ、不動産の所有権が移転したことにならず、売買契約を締結しても売却できません。
登記手続きには、相続人全員の登記申請書と印鑑証明書が必要です。不動産登記簿謄本を取得し、登記申請を行います。
不動産会社に売却依頼
相続したマンションを売却するためには、不動産会社に売却依頼をし、査定を受ける必要があります。査定額に納得がいけば、売却の手続きを進めます。
売買契約を結ぶ
売買価格や引き渡し日などの条件を決め、売買契約を結びます。売買契約書は、弁護士や司法書士に作成してもらうことができます。
売買契約書には、売買代金の支払い方法、引き渡し日、売主と買主の氏名・住所、マンションの詳細などを記載します。
引き渡しの実施
売買代金の支払いが完了したら、マンションを引き渡します。引渡しまでに清掃や修繕が必要な場合があります。
引き渡しの際、売主は売買契約書に記載された引き渡し日に買主にマンションを引き渡します。引き渡し後、登記簿に買主の名前が登録されます。
相続不動産を売却した際の税金について
ここでは、相続した不動産を売却する際によくある質問をまとめて紹介します。
Q1. 相続した不動産を売却した場合、いつまでに税金を納める?
相続した不動産を売却した場合、印紙税は契約書を作成したときに納付しなければいけません。譲渡所得税は、売却した年の翌年の確定申告期限(3月15日)まで、住民税は翌年6月以降に納付します。
Q2. 相続した不動産をすぐに売却する場合、相続登記は省略できますか?
不動産を売却する前に、被相続人から相続人への相続登記をする必要があります。すぐに売却したとしても、相続登記の手続きは省略できません。
なぜなら、被相続人から買主へ直接名義変更することができないため、事前に相続登記を行う必要があるからです。
まとめ
この記事では、相続したマンションを売却する際にかかる税金と特例について解説しました。
相続したマンションを売却する際には、印紙税、譲渡所得税、住民税の3つの税金がかかります。また、特別控除や取得費加算などの特例を利用することで節税することも可能です。
相続マンションの売却は、税金や手続きが複雑な場合があるため、不動産会社や専門家への相談もおすすめします。