勤務医や開業医などの医師のなかには、不動産投資をはじめている方が多くいます。不動産投資と聞くと、本業以外で収入を得る手段を思われがちですが、節税対策としても有用な手段です。
医師のなかには、「不動産投資に興味がある」「はじめてみたいが成功するか不安」などの悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
不動産投資は手放しで成功するものではないため、始める際は注意が必要です。
この記事では、医師が不動産投資をするべき理由や節税の仕組み、不動産投資をする際の注意点について詳しく解説します。
医師が不動産投資をするべき理由
ここでは、医師が不動産投資をするべき理由を紹介します。
節税になる
医師が不動産投資をするべき理由として、所得税・住民税の節税になることが挙げられます。
日本の累進課税制度では、所得が高ければ高いほど所得税・住民税が高くなります。収入が高い傾向にある医師は、その分高い税金を支払わなければなりません。
特に収入が高い医師の場合は、税率が50%以上になることも珍しくないため、節税対策は一つの課題であるといえるでしょう。
節税の仕組みについては後述しますが、不動産投資を行うことで帳簿上の赤字を損益通算できたり不動産投資に伴う費用を経費として計上できたりなど、節税に役立てることが可能です。
さらに、減価償却費を経費として計上することで本業の所得を圧縮し、課税額を下げることもできるため、高い節税効果が期待できます。
本業以外で資産形成できる
不動産投資で得られる収入は不労所得ともいわれており、自身の労働力をかけなくても収入が得られることが特徴です。労働集約型と呼ばれると医師と特に相性が良く、副収入を得る手段として優れています。
特に開業医の方であれば、万が一自分が働けなくなった場合は、従業員だけではなく、自分の家族まで路頭に迷わせるリスクがあります。
不動産投資による安定した収入があれば、自分に万が一のことがあっても従業員や家族の生活を守っていくことが可能です。しかし、借入れをして不動産投資をはじめた場合は注意が必要です。
借入金は収入として扱われない代わりに、返済時の元金は費用として扱われません。毎月の返済額が多すぎる場合は、お金が残っていないのに所得だけが多い状態に陥ってしまう可能性があります。
融資が受けやすい
医師は年収が高い傾向にあり、失業するリスクが少ないといわれています。そのため、高収入や将来の安定性が見込めるとして、金融機関からの信用度も高いです。
信用度が高い方は、金融機関から低金利や長期借入などの有利な条件で融資が受けやすくなります。
不動産投資をはじめる際は、物件の購入にあたってまとまった資金が必要です。
中古の区分マンションや戸建てであれば、手持ちの資金で購入できる可能性はありますが、一棟マンションやアパートを購入する場合は、その限りではありません。
一棟マンションをはじめとする大型の不動産は億単位の資金が必要になることも珍しくなく、多くの場合、金融機関から融資を受けて購入します。
医師であれば好条件で融資が受けられるケースが多いため、不動産投資をはじめるハードルが低くいといえるでしょう。
多忙な医師でもはじめやすい
不動産投資(不動産管理)は、必ずしも自分で行わなければならないというわけではありません。
不動産の購入後は、不動産会社に委託することで管理のすべてを任せることができるため、多忙な医師でも時間や手間をかけることなく、不動産投資がはじめられます。
不動産管理には、募集や賃貸借契約、家賃の回収や敷金の清算など、さまざまな業務が伴います。また、時には入居者の騒音や違法駐車などのトラブルに対応する必要もあり、そのすべてを1人で行うのは現実的ではありません。
費用はかかりますが、管理業務を不動産会社に委託することで、自身は手間と時間をかけずに本業に専念できるため、常に忙しい医師にとって不動産投資は相性が良いといえるでしょう。
相続税対策になる
不動産投資は、相続税対策としても有用な手段です。
相続税は所得税と同様に累進税率が採用されており、課税遺産評価額が高ければ高いほど相続税も高くなります。
現金や株式はその金額や相続が開始した時点の時価額が評価額になりますが、不動産として資産を保有していた場合は、実際の時価よりも低い評価額になることが多いです。
相続税を計算するうえで、不動産は路線価や固定資産税評価額を用いるため、実際に市場で取引されている価格より30%ほど低くなる傾向にあります。
その不動産が収益物件だった場合は、50%以下まで評価額を下げられることもあるため、資産が多い傾向にある医師であれば、不動産投資をするメリットは大きいといえるでしょう。
また、収益物件は生前贈与にかかる贈与税の軽減にも有用であり、相続人となる予定の方に生前贈与しておけば将来的な相続財産の軽減にもつながります。
不動産投資で節税する仕組み
医師が不動産投資をする大きなメリットと、節税が挙げられます。ここでは、不動産投資が節税につながる仕組みについて解説します。
損益通算
不動産投資をすることで、本業の所得と不動産所得を損益通算でき、節税につなげることが可能です。不動産投資では、管理費や修繕費、不動産会社への委託料など、さまざまなものが経費として計上できます。
また、不動産の購入時にかかった減価償却費や損害保険料なども経費の対象であり、不動産投資をはじめた初年度は不動産購入に伴う諸費用も差し引けるため、多くの場合赤字になります。
不動産所得の赤字部分は本業の所得と損益通算ができ、高額になりがちな給与所得の課税額を少なくできるため、所得税・住民税を安くすることが可能です。
減価償却
減価償却とは、不動産をはじめとした時が経つにつれて価値が減少する資産について、取得時にかかった費用をすべて計上するのではなく、耐用年数の期間にわたって分割して計上する方法です。
取得金額に不動産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算し、毎年経費として計上できます。
減価償却費は実際に支出していないにもかかわらず経費として計上できることが特徴であり、支出していない金額分だけ節税できます。
減価償却に関する知識は、不動産投資をはじめるにあたって必ず必要になるため、不動産を購入する前に理解を深めておくことが大切です。
医師が不動産投資をする際の注意点
不動産投資は、必ずしも成功するとは限りません。
「自分なら大丈夫」「失敗するはずがない」など、自分を過信しすぎた結果、不動産投資に失敗したというケース決して少なくありません。
例えば、不動産の相場を知らずに割高の物件を購入してしまったり、利回りの相場を知らずに収益性の低い物件を購入してしまったりなどが挙げられます。
不動産投資は慎重に進めることが成功のカギであり、不動産について一から勉強する姿勢を持つことが大切です。
また、高収入である医師は悪徳な不動産業者に狙われやすい傾向にあるため、不動産を探す際は、信頼できる不動作業者を見極めるように注意しましょう。
まとめ
この記事では、医師が不動産投資をするべき理由や節税の仕組み、不動産投資をする際の注意点について解説しました。
高収入や将来の安定性がある医師は、不動産投資がはじめやすい職業といえます。
事前にしっかりと知識をつけておけば節税だけではなく、将来的な資産を形成できるため、はじめるメリットは多いです。
しかし、不動産投資はあくまで投資のため、必ず成功するわけではありません。物件選びや業者選びを間違えるとかえって損をするリスクがあるため、可能な限り慎重に進めることが重要です。