不動産投資による節税の仕組みを知っていますか?
ミドルリスクミドルリターンで長期的に安定した収入を確保できる不動産投資は、節税という観点から見ても優れた投資です。しかし、節税目的だけで不動産投資を始めてしまうと、予期せぬ事態に遭遇する可能性もあります。
この記事では、不動産投資における節税の仕組みと失敗しないための注意点を解説していきます。老後の蓄えを用意するためだけでなく節税対策もしたいと考えている方は、ぜひ参考にして下さい。
不動産投資による節税は確定申告が必要
自分が購入した物件を人に貸すことで毎月家賃収入を得られる不動産投資は、安定した長期リターンの確保、副業、保険金代わりになる、節税効果があるなどさまざまなメリットがあります。
まず大前提として覚えておかなければいけないのが、『不動産投資で節税するためには確定申告が必要』だという点です。
確定申告とは1年間の所得をまとめて国に納めるべき税額を報告する手続きのことですが、会社勤めをしている方は個人で行う必要がないため、仕組みや方法をまったく知らないという方も多いでしょう。
普段は普通の会社に勤めている方が副業で不動産投資を始めた場合でも、給料以外で20万円以上の所得があった場合は必ず確定申告をしなければいけません。また、確定申告をしなければ後述する節税効果も受けられませんので、必ず忘れないように手続きしましょう。
ちなみに確定申告には青色申告と白色申告があるのですが、不動産投資で収入を得ている方は青色申告を選択することをおすすめします。
● 青色申告⇒複式簿記で帳簿をつけることが義務付けられていて、損益計算書と貸借対照表を作成し、確定申告書(B)、青色申告決算書、控除を証明する書類と共に提出
青色申告は、事前に税務署へ提出の申告をする必要があるなど白色申告よりも面倒な部分が多いのですが、特別控除が多いです。
不動産投資は高い節税効果が期待できますので、それを最大限に活かすために白色申告ではなく青色申告で毎年提出するようにしましょう。
不動産投資による節税の仕組み
ここからは、不動産投資で節税する仕組みを解説していきます。
経費として計上
毎月の家賃、入居時に支払われる礼金、更新料などが不動産投資における収入となるわけですが、これらすべてが課税対象になるわけではありません。ここから必要経費を差し引いた額が課税対象となりますので、経費が多ければ多い分だけ節税ができます。
不動産投資で経費として計上できる対象となるのは、主に以下のようなものです。
● 管理会社への委託料
● 固定資産税
● 不動産所得税
● ローン金利
● 減価償却費
不動産投資は物件を購入して終わりではありません。
入居者への対応、クレーム処理、共有スペースの清掃といった管理業務が必要ですし、入居者がいなくなれば新しい人を入居させなければいけません。このような管理を委託する場合には、当然ですが委託料が必要です。
このように、投資物件を管理するために必要な費用に対しては経費計上が認められていますので、税金を減らすことができます。
この中で特に注目してほしいのが減価償却費で、これが不動産投資における節税の最大のポイントになります。
減価償却費で計上
不動産をはじめとする建築物、器具、車両、工場、オフィスなどの形がある有形固定資産には、耐用年数があります。減価償却とは、耐用年数に応じて何年も長く使えるモノに対しては購入した年に全額を計上するのではなく何年かに分けて費用計上していくという考え方です。
会計上の使用可能な年数は減価償却費として定められていますが、その期間内であれば数年に渡って少しずつ費用を計上できます。例えば5,000万円の物件を購入して減価償却期間が5年の場合、毎年1,000万円ずつ計上して税金を支払えば良いというわけです。
不動産投資で節税ができる最大のポイントはここで、減価償却費を使えば会計上の赤字を作ることができ、その赤字を確定申告で給与所得にぶつければ所得を圧縮できます。これは税務上認められている節税対策なので、まったく問題ありません。
ひとつだけ注意しなければいけないのは、減価償却できる資産は時間の経過で劣化する有形資産だけという点です。建物は劣化していくので対象ですが、土地は経年劣化していくものではないので対象にはなりません。
不動産投資で節税する際の注意点
ここからは、不動産投資で節税する際の注意点を解説していきます。
節税目的だけで利用しない方が良い
不動産投資のメリットに節税がありますが、これはあくまでも他のメリットを十分に享受できたうえでのメリットです。
所得税、住民税、相続税などを減価償却費を利用して節税するためだけに不動産投資を行った場合、十分な調査をせずにリターンが少ない物件を購入してしまうリスクがあります。
不動産投資は物件を購入して終わりではなく、継続的に入居者がいる状態にしなければいけませんし、そのためには適切な管理が必要です。
あくまでも長期的な安定収入を確保できる物件を見つけたうえで、節税もできるというメリットを利用しましょう。節税だけを目的に考えるのであれば不動産投資よりも適している方法を見つけられるはずなので、その点はご注意下さい。
追加の資金調達が難しくなる
投資用物件をローンを組んで購入している方の場合、さらなる資金調達を行って物件を増やそうと考える時期が来るかもしれません。長期的な安定収入が得られる物件が増えれば、当然ですがその分だけ毎月の収入が増えます。
しかし、前述した減価償却費の計上により赤字で確定申告をしていると、銀行融資を受ける際の審査通過が難しくなります。
もちろん十分な収入があり、減価償却費の計上で赤字になっていることをきちんと説明できれば審査に通過できる可能性もありますが、審査の目が従来よりも厳しくなることは確実です。
課税所得が900万円以下の場合はおすすめしない
課税所得が900万円以下の場合、所得税、住民税率、譲渡税率の差を大きくすることができないため、節税できる税金額と不動産投資によるリスクが見合いません。
日本は累進課税制度を導入しているので、課税所得が低い方は税率も低く設定されています。減価償却で所得を圧縮したとしても課税所得が900万円以下の方は大きな節税は見込めません。
しかし、まったく無意味だというわけではありません。課税所得が900万円以下でも節税は可能ですが、その場合は前述したように節税目的のためだけに不動産投資を行うメリットはほとんどありません。
逆を言えば、不動産投資による収益がある前から課税所得が900万円を超えている方であれば、節税目的のためだけに不動産投資を行う恩恵は得られます。
まとめ
不動産投資による節税の仕組みと注意点を紹介してきましたが、参考になりましたか?
自分が不動産投資の節税に向いているかどうかは、課税所得が900万円を超えているかどうかが目安です。課税所得が900万円であっても節税ではそこまで大きな恩恵を得ることはできませんが、副業としての長期的な安定収入の確保や、保険の代わりといったさまざまなメリットは享受できます。
不動産投資による節税は、減価償却費による所得の圧縮です。節税対策で不動産投資を始めようと考えている方、または現在進行形で投資をしていて今後節税対策したいと考えている方は、この記事を参考にしていただければ幸いです。