相続などで空き家を所有したものの、「使う予定もないので売却したい」とお考えの方は多いのではないでしょうか。
しかし空き家の売却は、名義変更や解体の判断、税金や諸費用など、通常の住宅売却以上に注意すべきポイントがあります。
この記事では、不動産のプロの視点から、空き家を売却する際に押さえておきたい注意点を売却前・売却後に分けて解説します。
空き家を売却する際の注意点7つ

空き家の売却は、住んでいる家を売る場合と比べて手続きが複雑になりがちです。
ここでは、売却を進めるうえで必ず押さえておきたい7つの注意点を順に解説します。
● 売却前の解体やリフォームは慎重に
● 売却額がそのまま手元に入るわけではない
● 相場を調べて価格設定をする
● 複数の不動産会社に査定を依頼する
● 余裕のあるスケジュールで売却を進める
● 不動産売買契約書を必ず確認する
売却前に空き家の名義を変更する
不動産は登記上の名義人でなければ売却できません。
相続した空き家が亡くなった親名義のままというケースは多く、この状態では買主が見つかっても契約を進められません。
2024年4月から相続登記は義務化され、所有権の取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
● 相続人全員の戸籍謄本・住民票
● 遺産分割協議書と印鑑証明書
書類集めや協議には時間がかかるため、早めに司法書士へ相談しましょう。
売却前の解体やリフォームは慎重に
「更地のほうが売れやすい」と考えがちですが、必ずしも正解ではありません。
リフォームも同様で、費用をかけた分だけ価格が上がるとは限りませんし、買主が自分好みに改装したいケースも多いためです。
基本は現況のまま売り出し、不動産会社の意見を聞いてから判断しましょう。
売却額がそのまま手元に入るわけではない
売買価格が1,000万円でも、そのまま受け取れるわけではありません。
仲介手数料が39.6万円、相続登記や抵当権抹消の費用が10〜15万円、印紙税、さらに残置物の処分に20〜50万円かかります。
諸費用だけで70〜100万円ほどで、ここに利益が出た場合の譲渡所得税が加わります。特に見落としやすいのが残置物の処分費です。
家財が多く残った家では処分費用が50万円を超えることもあるため、事前に見積もりを取っておきましょう。
相場を調べて価格設定をする
相場を知らないまま不動産会社の提示額を受け入れると、安く売ってしまうことがあります。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」やレインズ・マーケット・インフォメーションを使えば、近隣の実際の成約価格を調べられます。
注意したいのは、ポータルサイトの価格が売出価格であって成約価格ではないことです。実際には5〜10%値引きされて成約するケースが多く、売出事例だけでは相場を高く見積もってしまいます。
売り出し価格は一度決めると簡単には変えられないので、複数の情報源を確認したうえで決めましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する
査定額は不動産会社によって数百万円変わることもあります。可能であれば3社以上、大手と地域密着の両方に依頼するのがおすすめです。
● そのエリアでの取引実績があるか
● 空き家や相続案件を扱った経験があるか
● 売れなかった場合の値下げの進め方まで話せるかか
注意点として、査定額がただ高い会社を選べばいいというわけではありません。
査定額が一番高い会社を選ぶと、その価格で売れずに値下げを繰り返し、半年後には他社の当初査定を下回ることがあります。
売り出し期間が長い物件は買主から敬遠されるため、根拠を明確に説明できる会社を選びましょう。
余裕のあるスケジュールで売却を進める
空き家の売却は、スムーズに売れた場合、売り出しから引き渡しまで3〜6か月が目安ですが、その前の準備にも時間がかかります。
空き家の3,000万円特別控除は相続開始から3年を経過する年の12月31日まで、取得費加算の特例は相続税の申告期限から3年以内が条件のため、逆算すると動ける期間は思ったより短くなります。
期限が迫るほど買主に足元を見られ、値引き交渉に応じざるを得なくなります。
どうしても急ぐなら不動産会社の買取という選択肢もありますが、仲介相場の6〜8割が相場なのでどのような方法で売却するかは家族と話し合って決めましょう。
不動産売買契約書を必ず確認する
不動産売買契約書は署名・押印すると簡単には撤回できません。
空き家で多いのが、引き渡し後の雨漏りやシロアリ、給排水管の不具合です。
長く使っていない家は、水を通した途端に配管から漏れることがあります。
免責特約を付けても、売主が知りながら伝えなかった欠陥は責任を問われるため、把握している不具合は事前に告知しておきましょう。
売却後に注意しておくべき点

売却の翌年に確定申告を行う
空き家を売って利益が出た場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日に確定申告が必要です。
譲渡所得は「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で計算できます。
- 短期譲渡(所有5年以下):39.63%
- 長期譲渡(所有5年超):20.315%
相続した物件は被相続人の取得日と所有期間を引き継ぐため、多くの場合は長期譲渡になります。
最も注意したいのが取得費の証明です。購入時の売買契約書が見つからないと、売却価格の5%しか取得費に計上できません。
1,000万円で売った物件なら取得費は50万円とみなされ、ほぼ全額が課税対象になります。権利証と一緒に保管されていることが多いので、家財を処分する前に必ず探しておきましょう。
控除の申請を行う
空き家の売却で使える控除は主に3つあります。
● 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
● 居住用財産の3,000万円特別控除
空き家の3,000万円特別控除は、1981年5月31日以前の建築、区分所有建物でないこと、相続直前に被相続人が一人で住んでいたこと、相続開始から3年を経過する年の12月31日までの売却などが要件です。
旧耐震のまま売ると適用されませんが、買主が引き渡しの翌年2月15日までに耐震改修か解体をすれば認められます。
被相続人が老人ホームに入居していた場合も、要介護認定など一定の要件を満たせば適用可能です。
要件が細かく、判断を誤ると数百万円の差が出ます。売却前の段階で税理士に確認しておきましょう。
空き家を売却する際の流れ

空き家を売却する際の流れを確認してみましょう。
● 相場調査と複数社への査定依頼
● 残置物の撤去、ハウスクリーニング
● 売り出し開始、内覧対応
● 価格交渉、売買契約の締結(手付金の受領)
● 境界確定、引き渡しの準備
● 決済、引き渡し(残代金の受領と所有権移転登記)
知っておくべきポイントは、媒介契約は3か月ごとの更新なので、反響がなければ更新のタイミングで価格や販売方法を見直しましょう。
内覧では電気と水道を使える状態にしておくと印象が変わるため、売却が決まるまで解約せずに残しておくのがおすすめです。
売買契約から決済までは1か月ほどあり、この間に買主は住宅ローンの本審査を受けますが、審査が通らなければ契約は白紙になります。
審査に落ちてしまった場合は、また別の買主を探す必要があるため、大幅にスケジュールが押してしまいます。
このような場合でも対応できるように、余裕を持ったスケジュール組みをしておきましょう。
空き家を売却する際にかかる費用

空き家を売却する際には、費用が発生します。
「売却額=全て手元に入る」というわけではないので、注意しましょう。
● 印紙税:1,000万円超5,000万円以下で1万円(軽減措置適用時)
● 相続登記:登録免許税(評価額×0.4%)+司法書士報酬10〜15万円
● 抵当権抹消登記:不動産1個につき1,000円+司法書士報酬1〜2万円
● 確定測量費用:35〜80万円
● 譲渡所得税・住民税:20.315%または39.63%
最も大きな支出は仲介手数料と譲渡所得税です。
空き家特有の費用としては残置物の処分費がかかる場合もあり、家財が多く残っている場合は50万円を超えることもあります。
解体や測量は物件の状況によって必要かどうかが変わるため、査定の段階で不動産会社に確認しておきましょう。
なお400万円以下の物件は、仲介手数料の上限が33万円(税込)まで認められています。
まとめ
空き家の売却は、名義変更や税金の特例など、通常の住宅売却とは違う注意点がいくつもあります。
判断を誤ると数十万円から数百万円の差が出ることも珍しくありません。
特に税金の特例には期限があり、気づいたときには使えなくなっていたというケースもあります。
空き家は放置するほど傷みが進み、維持費と固定資産税だけがかかり続けます。
空き家の売却を考えている方は、早めに不動産会社と税理士に相談してみてください。
