長らくペットブームが続く日本では、犬や猫との暮らしは文化として根付いています。それに伴い、ペット可物件の需要も高まっています。
以前は戸建て物件での飼育が大半だったペットですが、近年ではマンションやアパートでもペット飼育を可能とする物件が多く見られます。
動物ではなく家族であるペットを安心して飼育するには、ペット可物件が欠かせません。
この記事では、不動産投資でペット可物件を選択するメリットとデメリットを紹介します。収益用物件をペット可にする際の影響を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
ペット可物件は需要が高い
2022年12月にペットフード協会が発表した『全国犬猫飼育実態調査』によると、全国で飼育されている犬と猫の数は約1,589万頭です。
犬の飼育数は年々減少しているものの、一人暮らしでも飼いやすいとされている猫は、上昇と微減を繰り返しながら推移しています。
記事執筆時点(2023年4月4日)で、LIFULL HOME’Sに登録されている東京都の賃貸物件数は236,881戸。その中でペット可物件は55,501戸の約23%でした。
犬と猫を飼育している人、またはコロナ禍の影響により飼いたいと考えている人が増えている一方、ペット可物件の数は少ないというのが実状です。
また、犬や猫を飼育している人はペット可物件しか選択肢がないという点を考えれば、ペット可物件の需要は高く、今後も下がりにくいことが予測できます。
不動産投資でペット可物件を選択するメリット
ここでは、不動産投資でペット可物件を選択するメリットを紹介します。
空室対策に効果的
1つ目のメリットは、空室対策になる点です。
不動産投資で最も注意すべきリスクは空室です。入居者からの家賃で収益を上げる仕組みである以上、誰も住んでいなければ利益を得ることはできません。
空室対策を行うためには、競合との差別化が重要です。アクセスが悪い、近くにコンビニがないなどの悪い条件がある物件でも、ペット可というだけで差別化を図ることが可能です。
入居者が長く住む傾向にある
2つ目のメリットは、入居者が長く住み続けてくれる傾向にある点です。
普通の物件に比べてペット可物件は数が少ないです。そのため、居住者は気軽に引越しを考えることができません。
また、特に猫は家に懐くともいわれている程、引越しや環境の変化を嫌う傾向にあります。飼育しているペットのことを考え、長く住む方が多い傾向にあります。
入居者に長く住んでもらえれば、継続的に安定した収益を得ることができます。
賃料を高く設定しやすい
3つ目のメリットは、賃料を高く設定しやすくなる点です。
ペット可物件の数は少ないため、普通の物件に比べて多少家賃が高くても、条件さえ合っていれば選択肢に含めるという人は多くいます。
当然ではありますが、家賃を高く設定すれば自身が得られる収益は多くなります。
また、本来であれば条件が悪い物件は賃料を下げて入居者を集めるのが一般的ですが、ペット可にすれば家賃を高くしながら集められる可能性があります。
敷金・礼金を取りやすくなる
4つ目のメリットは、敷金・礼金を取りやすくなる点です。
競合が多い物件の場合、敷金や礼金が少ない物件の方が人気が高いです。中には、入居者を集めるため敷金や礼金を0円にしている物件も少なくありません。
しかし、ペット可物件は競合が少なく需要が高いため、敷金や礼金を相場より高く設定したとしても借り手が集まりやすいといえます。
不動産投資でペット可物件を選択するデメリット
続いては、不動産投資でペット可物件を選択するデメリットを紹介します。
原状回復費用が高額になりやすい
1つ目のデメリットは、原状回復費用が高額になりやすい点です。
例えば犬を飼っていると、壁や床を噛んで表面が剥がれることがあり、猫を飼っていると爪とぎで壁紙に傷が付きやすくなります。
また、トイレの失敗でフローリングに染みが付いたり、定期的に掃除をしていなければ独特の臭いが部屋全体に付着することも考えられます。
このように、ペット可物件は人だけが住んでいる時と比較すると物件が劣化しやすいため、原状回復費用が高額になりやすいです。
相場よりも家賃を高く設定する、または敷金を多めに貰うことで対処できますが、通常よりも高額な原状回復費用が必要になる可能性が高い点は把握しておきましょう。
既存の入居者から理解を得られないことがある
2つ目のデメリットは、既存の入居者から理解を得られないことがある点です。
マンション全体がペット可物件であれば問題がありませんが、自身が所有している収益物件だけペット可にする場合は注意しなければいけません。
例えば、夜でも構わず犬は大きな声で鳴くことがあります。夜行性の猫は昼間は寝ていておとなしいかもしれませんが、夜は走り回るかもしれません。
飼い主からすればワガママで言うことを聞かないところも可愛いかもしれませんが、近隣住人からすれば、夜中の鳴き声は迷惑な騒音です。
もともとペット可物件であることを承知していれば問題ありませんが、入居者を集めるために変更した場合は、既存の入居者から理解を得られないかもしれません。
近隣トラブルの原因や入居者が転居する事態も考えられるため、いくら入居者が集まらないからといって無闇にペット可にすることは避けた方が良いでしょう。
ターゲットが限定されてしまう
3つ目のデメリットは、ペットを飼育している方だけにターゲットが限定される点です。
ペット可物件は、基本的に犬や猫を飼育している、もしくは今後飼育したいと考えている人だけがターゲットです。
ペットブームの影響もあり犬や猫を飼育している方は多いですが、割合でいえば何も飼っていない人の方が多いため、需要は高くとも数は少なくなります。
ペットを飼育していない方にとっては、わざわざ相場よりも高い家賃が設定されている物件を選ぶメリットはないため、選択肢からも外れてしまいます。
ターゲットが限定される点は大きなデメリットです。
不動産投資でペット可物件を選択する際に決めておくべきルール
収益用物件をペット可に変更するか検討している、またはペット可物件の購入を検討している方は、しっかりとしたルールを制定することをおすすめします。
特に明確なルールを定めておくべき部分は以下の通りです。
● 入居時に飼育中のペットの種類や数を申請してもらう
● 飼育方法(猫は室内飼育だけ等)を決める
● 原状回復費用の負担区分を細かく設定する
ペット可物件として入居者を集めるにしても、大型犬はNG、犬と猫を合わせて3匹までといったように、種類や数は決めておくことをおすすめします。
また、原状回復費用も事前に書面を取り交わしておけばトラブルに発展するリスクを軽減できるため、細かく設定しておきましょう。
あくまでも上記は一例であるため、各物件の特徴などに合わせて最適なルールを設定してください。
まとめ
不動産投資にペット可物件を選択するメリットとデメリットを紹介していきました。
犬や猫と共に安心して暮らすためには、必ずペット可物件に住まなければいけません。しかし、賃貸物件の総数におけるペット可物件の割合は少ないです。
不動産投資でペット可物件を選ぶメリットには、差別化を図れるため空室対策になる、賃料を高く設定しやすいなどがあります。
しかし、ターゲットが限定されすぎてしまう、近隣住民とのトラブル、原状回復費用が高額になりやすいなどのデメリットも忘れてはいけません。
また、入居者を集めるために安易にペット可にすると、既存の入居者からの理解を得られない場合もあるため注意が必要です。
ペット可物件を収益用物件にしようと考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。