不動産投資で収入を得ている人の中には、少しでも所得税や住民税の負担を軽減したいという方もいるでしょう。
所得税や住民税を軽減する方法としてふるさと納税の活用があり、寄付のお礼として納税地の特産品や、名産品を受け取ることができます。
一方で、「不動産収入にふるさと納税は適用される?」「どれくらいまでふるさと納税できる?」など疑問に感じることも多いでしょう。
この記事では、不動産投資による収入がある人のふるさと納税のルールや上限額、仕組みなどを紹介します。
ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、生まれたふるさとや応援したい自治体に寄付し、所得税や住民税を軽減できる制度です。
ここでは、ふるさと納税の制度や仕組みを紹介します。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、過疎で税収が減っている地域や、都市部との地域間格差を是正することを目的に作られた制度です。
ふるさと納税を行うことで寄付者は節税できるメリットがあり、所得税では寄付金分の所得控除、住民税では税額控除が適用されます。
ふるさと納税は子育て、農業振興、健康、福祉分野など、自由に寄付金の使い道を選べるのも特徴です。
また、ふるさと納税では、「寄付金控除」という制度を活用されており、寄付金から2,000円を引いた金額が控除されます。
例えば、年収300万円の方が5万円分のふるさと納税をした場合、控除される金額は「5万円-2,000円」で4万8,000円です。
ふるさと納税では返礼品がもらえる
ふるさと納税のメリットは、自治体の特産品や名産品などの返礼品を受け取れることです。
ふるさと納税を行っている自治体は、寄付者に対してお礼として特産品や名産物を送付しています。
自治体によって返礼品の内容は異なるため、返礼品からふるさと納税を行う自治体を選ぶ方もいます。
ちなみに、2019年より前は寄付額に対する返礼品の金額は自治体が自由に決めていました。
しかし、2019年の制度改正により返礼品の金額は寄付金の3割程度にすることが決められたため、自治体による返礼品の金額差はほとんどありません。
ふるさと納税の限度額
ふるさと納税で控除できる金額には限度があります。限度額を求める計算式は以下の通りです。
『(個人住民税所得割額×20%)÷(100%-住民税基本分10%-(所得税率×復興税率1.021))+負担金2,000円』
自身でふるさと納税の限度額を計算するのは簡単ではありません。
そのため、総務省のふるさと納税ポータルサイトに記載されている「全額控除されるふるさと納税の目安」を参考にしましょう。
例えば、ふるさと納税ポータルサイトによると、ふるさと納税を行う本人の給与収入が500万円で独身の場合は61,000円が全額控除となっています。
不動産投資で所得がある人のふるさと納税について
不動産投資により発生する収入から経費を差し引いた金額を、不動産所得といいます。
ここでは、不動産所得がある場合のふるさと納税の上限額について解説します。
不動産投資で所得がある人もふるさと納税できる
不動産投資で所得が発生している場合は、ふるさと納税を活用して節税できます。
不動産投資を専業で行っている方も、サラリーマンをしながら不動産投資を副業で行っている方も、就業形態に関係なくふるさと納税は自由に行える制度です。
また、所得に応じて控除額が変わってくるという点も同じとなっています。
副業で不動産所得があると控除できる上限額が増える
副業で不動産投資を行っている場合は、所得が増えるため控除できる上限金額も大きくなります。
なぜなら、給与所得と不動産所得は合算できるため、総所得額が大きくなり、それに応じて控除額も増えるためです。
例えば、給与所得が500万円で不動産所得が200万円あるとします。
給与所得500万円のみだと、単身者の上限の控除額は61,000円ですが、不動産所得の200万円を合算して総所得700万円だと、上限の控除額は108,000円です。
不動産投資の所得が赤字の場合
不動産投資の所得が赤字で給与所得が別である場合は、それぞれの所得を合算した金額に基づいてふるさと納税の限度額が決まります。
ふるさと納税の対象となる本人の所得は、損益通算と呼ばれる制度が適用されるため、赤字分も合算されるという仕組みです。
納税の対象となる本人の所得が減ると、ふるさと納税額の上限も下がってしまいます。
特に不動産投資を始めた初年度は初期コストも多くかかり、赤字になりやすいため注意しましょう。
不動産投資でふるさと納税を行う際の注意点
ふるさと納税は、納税ではなく寄付金という形式を取っているため、正しい理解が必要となります。
ここでは、不動産投資でふるさと納税を行う際の注意点を紹介します。
ワンストップ制度は使えない
不動産投資の所得は確定申告が必要となるため、ふるさと納税のワンストップ制度は使えません。
ワンストップ制度とは、所定の手続きを行うことによって、ふるさと納税の確定申告が不要となる制度のことです。
サラリーマンなどの給与所得者は、もともと確定申告を行う必要がないため、ワンストップ制度の活用で確定申告の手間が不要となります。
しかし、不動産所得は給与所得の有無に関係なく確定申告が必要であるため、どちらにしても確定申告が必要になるというわけです。
不動産投資による確定申告のやり方や必要書類、経費などは以下の記事でも詳しく解説しています。こちらも合わせてご覧ください。
⇒不動産投資による確定申告のやり方は?必要書類や計上できる経費を紹介
返礼品が課税対象になる場合がある
多額のふるさと納税を行った場合、返礼品が課税対象となってしまうケースがあるため注意しましょう。
ふるさと納税の返礼品は一時所得として課税対象となりますが、年間50万円までなら非課税となっています。
ふるさと納税の返礼品は寄付金の3割程度とされているため、167万円以上の寄付をしないと課税対象にはなりません。
しかし、返礼品が50万円を超えた場合には課税対象となり、確定申告を行って納税しなければなりません。
また、返礼品以外にも一時所得がある場合は、それらも合算して計算される点に注意が必要です。
例えば、生命保険の一時金やプレミアム商品券の相当分などは、一時所得としてカウントされます。
ふるさと納税の返礼品が50万円を超えていなくても、その他の一時金を合わせて50万円超えていれば、確定申告が必要となります。
一時的に大きな出費が発生する
ふるさと納税を行う際に、税額控除の上限額まで寄付をする場合、一時的に大きな出費が発生する点に注意が必要です。
ふるさと納税は本来支払うべき税金を先に寄付金として支払う制度であり、この時点ではすべて自身で費用の負担をしなければなりません。
ふるさと納税への出費が大きくなり、日常生活に影響を支障が出ないように、無理のない範囲で行う必要があります。
まとめ
この記事では、不動産投資を行う際に知っておきたいふるさと納税の仕組みや、限度額について解説しました。
ふるさと納税は、応援したい自治体や生まれたふるさとに寄付することにより、所得税や住民税の節税ができる制度です。
ふるさと納税では、寄付金の3割程度の返礼品を受け取ることができます。
不動産投資でもふるさと納税は使えますが、ワンストップ制度は使えないため、自身で確定申告を行う必要があります。
なお、ふるさと納税の上限額は所得が多くなるほど大きくなり、給与所得と不動産所得がある場合は、それぞれ合算した所得に基づいて算出されます。
不動産投資で節税を考えている方や、ふるさと納税に興味があるという方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。