不動産投資を行ううえで注意すべきポイントは、大規模修繕です。
特に中古マンションにおいては、次の大規模修繕の時期や修繕積立金の金額、有無を確認しておかないと、大きな支払いが発生するリスクがあります。
大規模修繕は必ず必要となるため、空室対策と並んで不動産投資で重要な項目の一つです。
この記事では、不動産投資で知っておきたい大規模修繕の基礎知識やリスク、周期や費用などを紹介します。大規模修繕の仕組みを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
不動産投資で知っておきたい大規模修繕とは
大規模修繕とは、経年劣化したマンションの建物や設備などを定期的に修繕することです。ここでは、不動産投資で知っておきたい大規模修繕の仕組みやルールを解説します。
大規模修繕の概要
大規模修繕は、住人が安全かつ快適に暮らせることを目的に、経年劣化したマンションの建物や設備を修繕するために行います。
建築基準法では主要構造物(壁・柱・床・はり・屋根・階段)のうち、一つ以上の箇所を半分以上修繕することが大規模修繕と定義されています。
大規模修繕を行わずに放置していると、雨漏りや設備故障が発生して生活に支障が出たり、イメージが悪化することで資産価値が下がる可能性があります。
不動産投資においては空室のリスクを高めることにつながるため、大規模修繕をして資産価値の低下を防ぐことも大きな目的です。
大規模修繕は、オーナーの義務として行わなければなりません。そのため、不動産投資のために不動産を購入する場合は、大規模修繕も考慮して選ぶ必要があります。
大規模修繕の具体的な箇所
大規模修繕は、共有部を中心として行われます。具体的には、下記のような箇所の修繕です。
- コンクリート補修
- タイル補修
- 外壁塗装
- 鉄部塗装
- 屋上の防水塗装
- 給排水管の補修
- エレベーターの交換
- オートロック設備の交換
すべての工事を行うわけではなく、経年劣化に応じて部品や修繕が必要な場所を対象とします。
玄関ドアやバルコニー、サッシなどの修繕については専有部分となるため、オーナーではなく、そこに住んでいる住人が負担しなければなりません。
そのため、大規模修繕では専有部分は非対象となりますが、大規模修繕に並行して各世帯にオプション工事の依頼を募るケースもあります。
大規模修繕のサイクル
大規模修繕は、12年周期のサイクルで行うのが一般的です。
これは建築基準法で「築後10年を経過した外壁がタイル貼りのマンションは3年以内に外壁の全面打診調査を行う必要がある」と定められているためで、調査と重なるタイミングで大規模修繕を行います。
また、大規模修繕は回数が増えるごとに、修繕するポイントも増えていきます。
例えば、1回目の大規模修繕は建物外部の修繕が中心になるケースが多いですが、2回目の大規模修繕は新たに建物内部のパーツなども点検・交換が必要です。
しかし、実際には大規模修繕のサイクルは不動産によって変わるため、不動産投資を検討している場合はどれくらいのペースで大規模修繕が行われているかも確認しておきましょう。
大規模修繕のための修繕積立金とは
マンションの大規模修繕には多額の費用がかかるため、修繕する資金を補うために入居者から毎月一定のお金を修繕積立金として徴収します。
国土交通省が平成30年に行ったマンション総合調査によると、修繕積立金の平均は1戸あたり11,243円です。また、修繕積立金は「長期修繕計画」に基づいて算出された金額となるため、大規模修繕を実施するために行った見積もりで費用が足りないことが想定されると、値上げを行うこともできます。
大規模修繕費は修繕積立金で補われますが、場合によっては修繕積立金よりも修繕費の方が多くかかるケースもあります。その場合、残りの費用についてはオーナーが負担しなければなりません。
大規模修繕の費用
国土交通省が行った「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、マンションの大規模修繕でかかった費用の割合が大きいのは下記の通りです。
- 1回目:4,000万円~6,000万円
- 2回目:6,000万円~8,000万円
- 3回目:10,000万円~15,000万円
このように、マンションの大規模修繕には多額の費用が必要となり、3回目以降では1億円以上かかっていることがわかります。また、戸あたりで見た場合の金額については、100万円〜125万円の割合が高く、回数による大きな違いはありません。
不動産投資で大規模修繕にかかる費用を抑えるポイント
大規模修繕には思いがけない費用が発生することもあります。ここでは、不動産投資で大規模修繕にかかる費用を抑えるポイントを紹介します。
築年数の浅い不動産を選ぶ
不動産を選ぶ前の段階であれば、大規模修繕にかかる費用を抑えるために、あえて築年数が浅い不動産選ぶのがおすすめです。
買い替えを検討している場合、5年以上の保有期間がないと税金が高くなるため、購入した物件は最低でも5年を超える保有を前提に選ぶ必要があります。
例えば、築年数が3年のマンションを購入して7年間で買い替えを行った場合、売却時におけるマンションの築年数は10年であるため、大規模修繕は不要です。
また、1回目の大規模修繕が終わった直後の不動産も、次の大規模修繕が終わるまでに買い替えると費用を抑えられます。
しかし、大規模修繕が終わった後の物件は相場よりも高くなりやすいため、注意が必要です。
定期点検と予防保全を行う
マンションの大規模修繕にかかる費用を抑えるためには、建物や部屋の定期的な点検・予防保全を行うこともポイントです。
破損や劣化が初期の段階であれば、大規模修繕が少ない費用で対応できることもあります。普段からこまめに修繕しておけば、大規模修繕のときにかかる費用を抑えることにもつながるでしょう。
複数の業者から見積もりを取る
大規模修繕にかかる費用を抑えるためには、複数の業者から見積もりを取り、安い金額を提示して信頼できる業者に依頼することもポイントです。
管理会社は普段から管理業務を行っているため、修繕するポイントや部分を把握しています。信頼できる管理会社であれば、大規模修繕を任せても問題ありません。
しかし、管理会社によっては下請け業者に大規模修繕を依頼し、不要な工事や手数料を徴収されることもあるため注意が必要です。
複数の業者に修繕費を提示してもらうことで、どこにどれくらいの費用がかかっているかを自分自身で比較しながら把握できます。
また、見積もりをコンサルタント会社やマンション管理士などの第三者にチェックしてもらい、提示された価格に問題がないかを調べることもおすすめです。
まとめ
不動産投資で知っておきたい大規模修繕の仕組みや周期、費用を抑えるポイントなどを紹介しました。
大規模修繕にかかる費用は修繕積立金から支払われますが、修繕の規模によっては積立金だけで補うことができず、オーナーが負担したり、金融機関からお金を借りて対応しなければなりません。
そうならないためにも、大規模修繕の周期を把握し、修繕費を抑える対策を行いましょう。また、大規模修繕のタイミングを見計らって不動産の購入を検討することもおすすめです。
不動産投資で大規模修繕の費用が気になる方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。