土地やマンション、一戸建てといった不動産を売却する際、気になるのが「税金」についてではないでしょうか?
不動産売却時には、さまざまな税金がかかります。譲渡所得税を始めとした不動産売却時に課せられる税金について詳しく知り、特例や控除を活用すれば、税金による損失を抑えることが可能です。
この記事では、不動産売却時に課せられる税金について詳しく解説します。「不動産売却を考えているが、税金についてよくわからなくて困っている」という方はぜひ記事を参考にしてみてください。
不動産売却時には税金がかかることがある
まず気になるのが、「どんなときに税金がかかるのか?」という点ではないでしょうか。
個人が不動産を売却したときの所得は「譲渡所得」に分類されます。マイホームやマンション、アパート、土地などの種類にかかわらず、不動産売却時に発生した所得はすべて譲渡所得です。
この譲渡所得を計算してプラスだった場合に、税金が発生します。反対に、譲渡所得がマイナスとなった場合は不動産売却時に税金が発生しません。
【税金がかかるケースの例】
- 不動産購入時よりも高い価格で売れた
- マイホームの買い換え時、売却価格の方が高かった
【税金がかからないケースの例】
- 不動産購入時よりも安い価格でしか売れなかった
- マイホームの買い換え時、購入価格の方が高かった
- マイホームの譲渡所得が3,000万円以下だった
譲渡所得税(不動産譲渡税)とは?
不動産を売却すると、発生した利益(譲渡所得)に応じて下記の3つの税金がかかります。この3つは総称して「譲渡所得税(不動産譲渡税)」などと呼ばれます。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税(所得税に対して2.1%。2037年3月31日まで)
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税を知るためには、まずは「譲渡所得」を計算する必要があります。譲渡所得は、以下の計算式で計算します。
【譲渡所得 = 譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用】
次に、上記の式で算出した譲渡所得を当てはめて、以下の計算式で譲渡所得税額を算出します。
【譲渡所得税額 = (譲渡所得 – 特別控除額)× 税率】
以下は、それぞれの用語の解説です。
用語 | 意味 |
---|---|
譲渡所得 | 個人が不動産売却で得た所得のこと。単純な売却額ではなく【譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用】の式で算出したもの |
譲渡価額 | 不動産を売却した際の金額のこと。 |
取得費 | 購入時の手数料や売却のためのリフォーム費用、設備費用などを合計した費用のこと。(取得費が不明の場合は譲渡価額の5%) |
譲渡費用 | 不動産を売るために支払ったさまざまな費用のこと。売却のための仲介手数料や印紙代、建物の取り壊し費用など |
特別控除額 | 要件を満たすことで、譲渡所得から控除できる金額のこと。 |
不動産の所有期間で譲渡所得税率が変わる
譲渡所得がプラスとなり税金が発生する場合、気になるのが「税率」です。
所得税と住民税は、原則として累進課税制度(課税額が高いほど適用税率が上がる課税方式)です。しかし、譲渡所得税は例外的に、給与所得や事業所得などその他の所得とは切り離して計算する「分離課税方式」という方法で計算します。
不動産売却の譲渡所得税の税率は、「不動産の所有期間」によって変わります。
売却した不動産の所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」で税率は39.63%、5年以上の場合は「長期譲渡所得」と呼ばれ税率は20.315%となります。それぞれ税率の内訳は以下のようになります。
所得の種類 | 税率 | ||
---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税(所得税に対して2.1%) | |
短期譲渡所得 (所有期間が5年以内) | 30% | 9% | 0.63% |
長期譲渡所得 (所有期間が5年以上) | 15% | 5% | 0.315% |
なお、不動産売却時の所有期間は「不動産を売却した年の1月1日時点」で判断します。
例えば、2015年5月1日に取得した不動産を、2020年10月15日に売却したとしましょう。この場合、カレンダー上での所有期間は5年を超えますが、「2020年1月1日時点」では5年以下となるため、短期譲渡所得になります。
この例の場合、2015年5月1日に取得した不動産は、2021年1月1日以降に売却すれば長期譲渡所得となるということです。
税金控除・特例を活用すれば不動産売却時の税額を減らせる
不動産売却の際に、ある一定の条件を満たすことで利用できる特例や税額控除があります。これらを利用すれば、税額を減らすことが可能です。
- 居住用財産の3000万円特別控除
- 特定の居住用財産の買い換え特例
- 所有期間が10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率
- 相続空き家特例
- 譲渡損失の損益通算
- 譲渡損失の繰越控除 など
さまざまな特例があり、それぞれ適用条件が異なるため事前に詳しく調べておきましょう。
不動産売却時にかかる譲渡所得税以外の税金
不動産売却時には、譲渡所得税以外にも以下の3つの税金がかかります。不動産を売却する際には、あらかじめそれぞれの税金についても詳しく知っておきましょう。
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
印紙税
印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼り付け、消印をして納税する税金です。
印紙税額は不動産の売買金額によって変わり、金額が高くなるにつれて税額も上がります。
なお、不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超え、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されるものは軽減措置の対象となります。
契約書に記載の契約金額 | 印紙税額(通常額) | 印紙税額(軽減措置) |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円以上〜10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円以上~50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円以上~100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円以上~ 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円以上~1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円以上~5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円以上~1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円以上~5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円以上〜10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円以上〜50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円以上 | 600,000円 | 480,000円 |
収入印紙を張り忘れると過怠税として本来納めるはずだった印紙代の3倍を納めなければいけなくなってしまうため、注意しましょう。
ただし、税務調査前に自分から貼り忘れの申告を行った場合、1.1倍に軽減されます。添付を忘れないことが一番ですが、もし忘れた場合はすぐに申告しましょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記の際に課される税金です。所有権移転や抵当権設定のための登記の場合、【固定資産税評価額 × 税率】で登録免許税が発生します。
抵当権抹消の登記の場合、不動産1件につき登録免許税1,000円がかかります。なお、土地と建物は別々となり、土地と建物を売却する場合は2,000円です。
消費税
不動産売却は、不動産会社を通して行うことが一般的です。このときに発生する仲介手数料には消費税が課せられます。
なお、仲介手数料は宅地建物取引業法で上限額が決められています。
不動産の売却価格 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
〜200万円以下 | 売却価格の5%+消費税 |
200万円~400万円 | 売却価格の4%+2万円+消費税 |
400万円以上〜 | 売却価格の3%+6万円+消費税 |
不動産売却をしたら確定申告が必要
不動産を売却して利益を得たら、確定申告を行う必要があります。特例の特別控除を受ける場合や損益通算を行う場合も、確定申告が必要です。
不動産売却で譲渡損失があった場合でも、要件に当てはまる場合は確定申告を行うことで税金が少なくなることもあるため、譲渡所得のプラス・マイナスにかかわらず、「不動産売却をしたら確定申告をする」と覚えておくといいでしょう。
まとめ
不動産売却時には、譲渡所得税や印紙税、登録免許税、消費税といった税金がかかります。
中でも大部分を占める譲渡所得税は、控除の特例の要件を満たすことで大きく軽減できるため、売却を検討している不動産に適用できそうな税金控除や特例を調べておくといいでしょう。