定期借家とは、契約期間があらかじめ定められている賃貸物件のことで、借主と貸主の双方にメリットがある便利な物件です。
一方で、契約期間中の途中解約がほぼ不可であり、ルールや契約の内容を把握していないと、損をしたり、普通の賃貸契約よりも不利になったりします。
定期借家を利用する際は、事前に内容を確認し、よく理解したうえで契約することが大切です。
この記事では、定期借家利用のメリットや途中解約方法、途中解約ができない場合にコストを少しでも減らす方法を紹介します。
目次 -INDEX-
定期借家の特徴
定期借家は、貸主が一時的に貸しだしたい物件や、売却予定の物件などを期限付きで貸しだす場合が多く、貸主によって契約期間が定められている賃貸物件です。
原則的に、契約期間終了と同時にほぼ契約は終了し、契約期間を過ぎての退去拒否や、契約の更新はできません。
定期借家には、そのほか以下のような特徴があります。
契約更新の代わりに再契約が可能なケースがある
定期借家の契約には更新がありませんが、双方が同意する場合にかぎり再契約が可能です。
その際、更新ではなく再契約となることから、入居時にかかる費用である仲介手数料や保証料などを再度支払わなければいけません。
ただし、1回目の契約時に敷金・礼金を支払っている場合は、再契約の場合でもそれらが引き継がれ、仲介手数料などが減額や割引になるケースがあります。
敷金・礼金や賃料が安い傾向にある
一般的な賃貸物件と比較して、敷金や礼金、賃料が低く設定されている場合が多いです。
その代わりに、契約期間や更新不可など、不自由な点が多い欠点があります。
定期借家のメリット・デメリット
定期借家は、借主と貸主のいずれにもメリットの多い物件です。
ここからは、定期借家のメリットとデメリットについて紹介します。
借主側のメリット
契約の期間が定められていることで長く利用したい借り手がつかず、多くの定期借家では賃料を下げて貸し出しているため、相場より安く物件を借りられることが借主側のメリットのひとつです。
契約期間が短いため、長期の出張やポップアップストアなどに重宝します。
定期借家には質の高い物件が多い傾向があることから、通常の居住のために選ぶのも有効的です。
借主側のデメリット
契約期間中の解約や、契約終了時の退去の拒否ができないことがデメリットのひとつです。
やむを得ない事情がないかぎりは、契約終了まで借りていなければいけないため、契約前に、期間満了まで借りる必要性の有無をよく考えましょう。
また、再契約ができない可能性が高いことに加え、契約に関わる費用も再び支払わなければいけないケースが多いです。
貸主側のメリット
物件の空きや取り壊しまでの期間を有意義にうめられることが貸主側のメリットのひとつです。
契約期間終了後、確実に退去してもらえるため、所有物件の管理や先の予定がたてやすく、貸主側が負担すべき立ち退き料などの支払いも必要ありません。
また、再契約締結の義務もないため、1回目の入居者の素行や振る舞いで次の契約を認めるかの判断が可能です。
貸主側のデメリット
他社との競合において不利になることから、賃料を相場より下げざるを得ないことがデメリットのひとつです。
また、契約に必要な書類の作成が手間となることに加え、手続きにめんどうな点が多いことから定期借家自体が選択されない場合もあります。
定期借家の途中解約が可能なケース
定期借家では、契約期間終了の半年から1年前に貸主から借主へ契約終了の通知が義務付けられていますが、原則的に契約期間中の解約はできません。
しかし、契約内容や、定期借家を利用する目的によって途中解約できる場合があります。
ここからは、定期借家を途中解約できるケースを紹介します。
契約内容に『解約権留保特約』の記載がある
最もトラブルの心配がなく途中解約できるのは、定期借家を解約権留保特約をつけて契約しているケースです。
解約権留保特約とは、契約期間中の途中解約を認める内容を定めた条項のことで、契約書にこの記載があれば、契約期間中でも途中解約を申し出ることができます。
定期借家を途中解約したい場合は、まず契約書の内容を確認しましょう。
中途解約権の行使を主張する
定期借家を居住を目的として契約している、または住まいの一部として利用している場合にかぎり、以下の条件を満たすことで途中解約が認められる可能性があります。
- 物件の床面積が200㎡未満である
- やむを得ない事情により契約続行が困難である
事業用兼居住用として定期借家を契約している場合は、物件すべての床面積が200㎡未満であることが条件です。
また、条件として認められるやむを得ない事情には、一般的に、転勤・療養・介護・災害などが挙げられますが、これらに明確な定義はないため、貸主や弁護士などの判断に委ねられます。
違約金の支払いを条件に交渉する
契約終了までの残りの期間分の賃料を違約金として支払うことで途中解約が可能なケースもあり、基本的には、残り5ヶ月なら5ヶ月分、6ヶ月なら6ヶ月分などの賃料を一括で払うこととされています。
解約権留保特約を結んでおらず、中途解約権の行使もむずかしい場合には、違約金を用意して解約を申し出るほかありません。
定期借家の解約交渉時に有効な方法
途中解約を認める条件が満たされなかった場合でも、貸主の合意が得られれば契約期間中の解約が可能です。
どうしても解約が必要な際は、以下のポイントを踏まえて交渉してみることをおすすめします。
- 途中解約をしたい理由を明確に
- 即時解約ではなく数ヶ月分の賃料の一括払いを条件として提示する
- 新たな入居者が見つかりやすい時期に解約することを伝える
途中解約交渉時に必要なやむを得ない事情は、これなら通る、これなら通らないと明言されていません。
明確に理由を訴え、やむを得ないと判断されれば、途中解約を認めてもらえる可能性が上がりやすいです。
また、基本的に、定期借家の途中解約の申し出は厳しい交渉であるため、貸主に不利なことを理解し、寄り添う気持ちで相談しましょう。
定期借家が途中解約できなかった際の工夫
定期借家をどうしても途中解約できなかった場合、引っ越し先にフリーレント物件を選ぶのがおすすめです。
フリーレント物件とは、契約初めの数ヶ月分の賃料が支払い不要な物件のことで、途中解約できなかった際、このフリーレント物件に引っ越すことで支払いが二重になることを避けられます。
ただし、フリーレント物件では、定期借家のように契約期間内の解約に関して違約金が発生するリスクがあるため、転居後またすぐに再転居する可能性が高い人にはおすすめできません。
定期借家側で、家賃の他に支払っている料金がある場合、居住していない間でもそれらの支払いは発生するため、手段としてフリーレント物件を選択する際は注意が必要です。
まとめ
今回は、定期借家の利用や途中解約時に役立つ方法について紹介しました。
定期借家は契約期間内の解約が原則的に認められていませんが、賃料が安く良質な物件が多いことから、短期で住まいを借りたい人にとっておすすめの制度です。
やむを得ない事情で定期借家を途中解約したい場合は、むずかしい申し出をしている自覚を持ち、貸主に寄り添った交渉を心がけましょう。
借主にも貸主にもメリットの多い賃貸物件であるため、期間満了まで利用できる可能性の高い人は、ぜひ定期借家を利用してみてください。