ネットで見つけた好条件の部屋に問い合わせたのに、来店すると「希望した部屋はもう決まりました」と言われた経験はないでしょうか。
希望の部屋がすでに決まったと断られるケースの中には、客を集めるためにわざと掲載されている「おとり物件」が含まれています。おとり物件の掲載は、景品表示法や宅地建物取引業法で禁止されている違法行為です。
本記事では、おとり物件の特徴と見分け方、問い合わせたときに起きること、遭遇した場合の対処法を解説します。
- おとり物件とは、実在しない・すでに契約済み・取引する意思がないなど、実際には借りられない物件の広告で、景品表示法や宅地建物取引業法で禁止されている
- 見分け方は「家賃が相場より著しく低い」「掲載日や更新日が古い」の2点を確認し、来店前に空室を問い合わせ、現地集合をお願いすること
- おとり物件に問い合わせると、来店後に「先ほど決まりました」と言われ、条件の合わない別の物件をすすめられることがある
- 遭遇したら、掲載ページやメールなどの証拠を残し、消費者庁や不動産公正取引協議会に情報提供できる
- その場で別の物件に決めず、複数の不動産屋で同じ部屋の初期費用や条件を比べ、対応が誠実な不動産屋を選ぶことが大切


宅地建物取引士
現在は、従業員300名の総合建築企業の不動産部門に所属し、若手社員の教育に加え、不動産仲介や土地・戸建ての仕入れを担当。
Homeeeマガジンでは、長年の実務経験を生かし、部屋探しや不動産会社選びに役立つ情報を、利用者の視点から監修している。
おとり物件とは?
「おとり物件」とは何か、まずは解説していきます。
- 実在しない住所や部屋番号で掲載されている
- すでに契約済みの物件が掲載され続けている
- 物件は実在するが、不動産屋に紹介する意思がない
- 周辺相場より家賃や初期費用が極端に安い
おとり物件とは、実際には借りることができないにもかかわらず、入居者を募集しているかのように広告されている物件のことです。
消費者庁の告示「不動産のおとり広告に関する表示」では、存在しない物件、存在するが取引できない物件、存在するが取引する意思がない物件の広告を、おとり広告として禁止しています。
たとえば、架空の住所で載せられた部屋や、入居者が決まった後も掲載が続いている部屋がおとり物件にあたります。
また、部屋が空いていても、問い合わせると別の部屋ばかりすすめられ、肝心の物件を紹介してもらえない場合もおとり物件です。
おとり物件の中には、相場より安い家賃などの条件を提示することで多くの問い合わせを集め、来店後に別の物件への誘導を目的として掲載されているものもあります。
一方で、掲載情報の更新忘れなどで、すでに契約済みの物件が広告に載っているケースもあります。
おとり物件が存在する理由
①情報のタイムラグ
不動産ポータルサイトでは、物件に申込みや成約が入っても、必ずしもリアルタイムで掲載を取り下げるシステムではありません。そのため、すでに契約済みの物件が数日サイトに残ってしまいます。
多くの不動産屋では、定期的に空室状況を確認し、掲載情報の更新や取り下げを行っていますが、特に1〜3月の繁忙期は申込みが集中するので、掲載や更新した直後であっても、申し込みが入ってしまっている場合もあります。
悪意がなくても起こることなので、気になる物件は早めに問い合わせて、空室状況を確認することが大切です。
②人為的なミス
掲載情報の入力や更新は、担当者が手作業で行うことが多く、どうしてもミスが起こります。家賃や間取り、設備などの条件を誤って入力したり、別の物件の写真を使ってしまったりするケースもあります。
故意ではありませんが、実際と違う情報が掲載されてしまうため、内見の前に条件を改めて確認し、写真と実物に違いがないかを担当者に聞いておくと安心です。
③おとり物件を掲載して問い合わせを増やすため
注意したいのが、集客のために意図的に掲載される「おとり物件」です。
相場より明らかに安い家賃や好条件の物件を掲載して問い合わせを集め、来店した客に「希望した物件はちょうど決まってしまいました」と伝え、別の物件を紹介するという手口です。
おとり広告は、宅地建物取引業法や景品表示法で禁止されており、違反した場合は処分の対象となる可能性があります。
また、不動産業界の自主規制ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」でも禁止されています。
おとり物件の見分け方4選
【見分け方①】家賃が相場より著しく低い
同じ駅・同じ間取り・同じ築年数などの条件が近い物件と比べて、著しく家賃が安い物件には注意が必要です。
賃貸物件の家賃は、立地・広さ・築年数・設備でおおむね決まるため、理由もなく大幅に安い部屋はほとんど存在しません。周辺の1Kの相場が7万円のエリアで、駅徒歩5分・築5年の1Kが5万円で出ていれば、まず疑ってかかるべきでしょう。
ポータルサイトの家賃相場ページで同じ条件の平均額を確認し、相場と大きく離れている場合は、問い合わせの段階で安い理由を必ず確認してください。
事故物件や定期借家など、安さに正当な理由がある場合もありますが、理由をはっきり説明できない不動産屋は、おとり物件を掲載している可能性があります。
【見分け方②】掲載日や更新日が古い
ポータルサイトの物件ページには、情報の公開日や更新日、次回更新予定日が記載されており、好条件の物件は、比較的短期間で申込みが入ります。
相場より安い家賃でも長期間掲載されている物件は、募集条件を確認しておきましょう。また、更新日が長期間かわっていない物件は、掲載情報が最新のものではない可能性があるため、問い合わせ時に募集状況を確認してみてください。
同じ物件が複数の不動産屋から掲載されている場合は、各社の掲載状況を見比べてみましょう。ほかの会社では掲載が終わっているのに1社だけ載せ続けているケースは、特に注意が必要です。
【見分け方③】物件が終了しているか先に連絡をもらう
気になる物件を見つけたら、来店予約をする前に「希望している物件はいま申込みが可能ですか」と電話やメールで確認してください。
おとり物件を掲載している不動産屋は、「詳しくはご来店のうえでご説明します」と、空室かどうかの回答をはぐらかす傾向があります。
誠実な会社であれば、問い合わせ時に空室状況の確認ができなくても、管理会社に確認後に回答するなどの対応をしてくれるでしょう。
メールで確認すれば、回答内容が文面として残るため、後でトラブルになった場合の証拠にもなります。「空いています」と回答があったのに来店後に「決まっていた」と言われた場合は、部屋探しを見直す判断材料になります。
【見分け方④】現地集合で不動産屋と待ち合わせる
内見を申し込むときに、店舗ではなく物件の現地で待ち合わせたいと伝えるのも有効な方法です。ただし、実際に募集している物件であっても、鍵の受け渡しや管理会社の規定によって現地集合が難しいケースがあります。
一方、おとり物件の場合は案内できる部屋がないため、「まずは店舗にお越しください」「鍵の手配があるので店舗で集合です」と来店を求められることがほとんどです。現地集合を何度お願いしても応じてもらえない場合は、理由を確認しましょう。
また、現地集合にすれば、物件の周辺環境や駅からの道のりも同時に確認できるため、部屋探しの効率も上がります。
おとり物件に問い合わせるとどうなる?
意図的におとり物件を掲載している不動産屋では、実際に紹介できない物件について「空いています」「ぜひ一度ご来店ください」と伝え、来店をすすめるケースがあります。
空室状況をはっきり答えないまま、来店日時の予約だけを急がされるケースが典型的で、実際に店舗へ行くと、「申し訳ありません、つい先ほど申込みが入ってしまいました」「今朝決まってしまいました」と告げられます。
さらに、「同じような条件の物件をご用意しています」と、あらかじめ準備していた別の物件を次々と紹介されます。
紹介される物件は、問い合わせた部屋より家賃が高かったり、駅から遠かったり、築年数が古かったりするなど、希望した条件に合わない場合があります。紹介された物件が希望条件を満たしているかを、冷静に判断することが大切です。
おとり物件に遭遇した際の対処法
おとり物件に実際に遭遇した場合の対処法を解説します。
- 物件の掲載ページをスクリーンショットで保存する
- 不動産屋とのやり取りをメールや録音で残す
- 消費者庁の情報提供フォームに報告する
- 地域の不動産公正取引協議会に情報提供する
おとり物件に遭遇したら、掲載ページに記載されている掲載日や物件番号、社名が写るようにスクリーンショットで保存し、証拠を残しましょう。
問い合わせ時のメールは削除せずに残し、電話でのやり取りは日時と担当者名、話した内容をメモしておきます。
証拠がそろったら、消費者庁の「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」から情報提供ができます。あわせて、不動産広告の苦情を受け付けている不動産公正取引協議会にも報告しましょう。
関東の物件なら首都圏不動産公正取引協議会、大阪など近畿の物件なら近畿地区不動産公正取引協議会など地域によって窓口が異なるので注意してください。
おとり物件に遭遇した際の注意点
おとり物件を掲載している不動産屋ですぐに他の物件に決めない
来店後に「ご希望の物件はさっき決まりました」と言われ、別の物件を紹介されてもすぐに申込みをするのは避けましょう。
おとり物件を掲載している不動産屋は、広告の内容だけではなく、契約手続きについても慎重に確認する必要があります。
たとえば、初期費用に不要なオプションを上乗せされたり、物件の欠点を十分に説明されなかったりするおそれがあります。
また、「紹介した部屋も人気なので今日中に決めないと埋まります」と決断を急がされた場合も、即決は禁物です。紹介された物件の情報をメモするか資料をもらい、一度持ち帰って冷静に検討しましょう。
別の不動産屋でも他の物件を探す
おとり物件に遭遇したら、賃貸物件の多くは、複数の不動産屋が同じ部屋を仲介できる仕組みになっているため、別の不動産屋でも部屋探しを進めてみましょう。
おとり物件を掲載していた会社で紹介された物件でも、ほかの会社で同じ部屋を扱っていることは珍しくありません。
おとり物件と同じ条件の物件を見つけた場合は、家賃や共益費、敷金・礼金、仲介手数料、入居時のオプション費用などの条件を必ず比べてください。
同じ部屋でも、仲介手数料の額や付帯サービスの有無によって初期費用が数万円変わることがあるので、見比べたうえで対応が誠実な不動産屋を選ぶことが、納得のいく部屋探しにつながります。
おとり物件についてのQ&A
わざとでなかった場合でもおとり広告になりますか?
意図的でなくても、おとり広告に該当する場合があり、成約後に物件情報を速やかに削除せず、掲載を続けること自体がおとり広告とみなされるためです。
不動産屋には、契約済みの物件をすぐに取り下げる管理体制が求められています。
外観写真がない物件は注意したほうがよいですか?
室内写真だけで外観写真がない物件は、別の部屋の写真を使い回していても気づきにくいため、注意したほうが良い物件のひとつです。
ただし、管理会社の方針で外観を載せていないこともあるため、写真だけで判断せず、空室確認とあわせて見極めましょう。
大手の不動産屋なら、おとり物件の心配はありませんか?
大手の不動産屋でも、おとり物件に出会う可能性はゼロではありません。店舗ごとに掲載を管理しているため、成約後に掲載が残っていることがあるからです。
会社の規模で判断するのではなく、来店前に空室を確認するという手順は、いずれの会社でも同じように行いましょう。
引っ越しの繁忙期は、おとり物件に出会いやすいですか?
1〜3月の繁忙期は、掲載中なのにすでに埋まっている物件に出会いやすくなります。申込みが短期間に集中し、ポータルサイトの掲載終了が成約に追いつかないためです。
繁忙期は、気になる物件を見つけたらすぐに空室を確認し、内見の予約を早めに入れることをおすすめします。
オンライン内見をお願いすれば、おとり物件を避けられますか?
リアルタイムのオンライン内見は、おとり物件を避ける方法として有効です。担当者が実際に部屋に入ってビデオ通話でつないでくれれば、物件が実在し、案内できる状態であることを確認できます。
ただし、オンライン内見ができる物件でも、すでに他の入居希望者から申し込みが入っている可能性があります。
内見時には、最新の募集状況もあわせて確認しましょう。
まとめ
おとり物件とは、存在しない物件や契約済みの物件、取引する意思のない物件を、客を集める目的で掲載する広告のことです。
お部屋探しの際におとり物件に問い合わせてしまうと、時間や手間が無駄になるだけでなく、悪質な不動産屋を利用してしまうリスクも高まります。
被害を避けるには、相場より極端に安い家賃や古い掲載日に注意し、来店前に空室状況を確認することが大切です。
おとり物件に遭遇しても、すぐに別の物件に決めず、複数の不動産屋で条件を比べて、信頼できる不動産屋で契約しましょう。
















