みなさんは、家賃補助制度をご存知ですか?これから入社や転職を控え、同時に引っ越しや一人暮らしも検討している方々にとっては、知っておくべき制度です。就職が決まっている企業、行きたいと思っている企業が家賃補助制度を提供しているかどうかは、事前にしっかりチェックしておきましょう。
この記事では、家賃補助制度の詳細や対象となる条件、どのぐらいの企業が支給しているかなどをご紹介していきます。
目次 -INDEX-
そもそも家賃補助(住宅手当)とは
家賃補助(住宅手当)とは、どのような制度なのでしょうか?言葉は耳にしたことがあるけれど、詳細はわからないという方も多いと思います。
一般的には、企業が社員の家賃や住宅ローンなどを一部支給する仕組みのことを指しますが、福利厚生にあたるのか、平均支給額はどのぐらいなのかなど気になるポイントをご紹介します。
企業が行う福利厚生のひとつ
家賃補助とは、企業が社員に対して、家賃や住宅ローンの一部を補助として支給する仕組みのことを指し、福利厚生制度です。家賃補助制度を導入するかどうか、どのような規定で導入するかなどは制限されていないため、企業側が自由に設定することができます。
一般的に「家賃補助」は家賃の一部を支給する制度を、「住宅手当」は住宅ローンの一部を補助する制度のことを指します。その他にも、引越しの際の費用を補助する「引越し手当」などが出る企業もあります。
家賃補助の平均支給額
家賃補助の平均支給額はどのぐらいなのでしょうか。厚生労働省が発表した令和2年の就労条件総合調査によると、住宅手当の支給額は月額で¥17,800が全体平均となりました。
企業規模が30〜99人の会社は¥14,200、100〜299人の会社は¥16,400、300人〜999人の会社は¥17,000、1,000人以上の会社になると¥21,300となっており、企業規模が大きいほど手当の額も大きくなっていくようです。
※厚生労働省発表『令和2年就労条件総合調査 結果の概況』(諸手当の支給された労働者1人平均支給額より)
家賃補助の支給対象となる例
では、どのような条件があれば家賃補助の支給対象となるのでしょうか。一般的な例をいくつかご紹介します。
世帯主であること
まず、ほとんどの企業が支給対象が「世帯主」であることを条件に定めています。世帯主とは、「主たる生計者」として世帯が申告した者を指します。
正社員であること
昔は多くの企業「正社員」であることが条件となっていましたが、「同一労働同一賃金」の導入に伴い、「雇用形態の違いにかかわらず、同じ仕事をしていれば同じ待遇にすべき」という考え方の企業が増えてきました。
勤務先から規定の範囲内に住んでいること
よくある条件として、「勤務先から●駅圏内 / ●キロ圏内に住んでいる」などの範囲が指定されることがあります。会社側からすれば通勤手当が減るというメリットもありますし、通勤のストレスも軽減できるため働く側も体力的な負担が減るので推奨する、という理由が考えられます。
家賃補助と社宅の違い
家賃補助と並んで、社宅が提供される企業も多くあります。その違いはどこにあるのでしょうか。また、どちらが働く側にとってお得なのでしょうか。社宅の場合は、企業が一度全ての家賃を支払います。そのうえで、家賃の一部を月々の給与から天引きする形で従業員が負担する、という仕組みが多いようです。
家賃補助の場合はその逆で、従業員が一度家賃の全額を支払い、企業は月々の給与に家賃補助として一部を上乗せして支払うという仕組みになっています。
家賃補助の場合、賃貸契約の手続きなどはシンプルですが、給与扱いのため課税対象となるというデメリットがあります。一方社宅は課税対象外となるため税金面では有利ですが、部屋を選べなかったり、近所付き合いなど気をつかうポイントが多いという面もあります。
家賃補助を支給している会社の割合
日本ではどのぐらいの企業が家賃補助を支給しているのでしょうか。厚生労働省が発表した令和2年の就労条件総合調査によると、全体の平均支給率は47.2%となりました。平均支給額と同じく、企業規模が大きい会社ほど、家賃補助を支給している割合が高くなっています。特に社員数300人以上の会社では6割以上が支給しているようです。
平成27年の前回調査では、全体の平均支給率は45.8%でした。ですが、近年は家賃補助の支給割合が減っている傾向もあるようです。
企業規模 | 支給割合 |
---|---|
30~99人 | 43.0% |
100~299人 | 54.1% |
300~999人 | 60.9% |
1000人以上 | 61.7% |
※厚生労働省発表『令和2年就労条件総合調査 結果の概況』(諸手当の種類別支給企業割合より)
家賃補助について知っておきたい知識
ここまで家賃補助の基本的な情報をご紹介してきましたが、いざ入社や転職となると、細かいことが気になりますよね。前述の通り、勤務先からの距離など、支給対象となる条件によっては住まいを選ぶ際に気をつけておかないと、補助が出ると思っていたのに対象外だった!なんてことも。
ここでは、家賃補助についてあらかじめ知っておきたい知識をご紹介します。
新入社員の場合、引っ越し手当が支給される企業も
春から新入社員として入社するという方の中には、実家を離れて会社の近くに引っ越しをする方も多いでしょう。その場合は、家賃補助とは別に引っ越し手当が支給される企業も多いようです。引っ越し費用には、引っ越し業者に支払う費用はもちろん、物件を新規契約する際の敷金、礼金、仲介手数料などの初期費用がありますよね。どこまでを負担してくれるかは会社によりますので、新入社員研修などであらかじめ確認すると良いでしょう。
会社の人事によって地方への転勤が決まった場合などは、上記に加えて移動の交通費などが対象になる場合もあります。
全て支払いを済ませる前に、思い当たる項目は会社に確認するようにしましょう。
家賃補助があるかどうかは求人票や面接で確認しよう
家賃補助の制度は法律で定められているものではないため、会社によってさまざまです。家賃補助を含めて福利厚生が充実しているかどうかも、会社選びの大事なポイント。これから長く勤める会社ですから、少しでも従業員の負担を軽減してくれる企業を選びたいですよね。
求人の募集要項で事前に確認したり、遠慮せず面接の際に聞いてみても良いでしょう。家賃補助の制度がある会社はそれだけ資金力があるということですから、その他の福利厚生も充実している可能性が高いです。
家賃補助は課税対象となる
前述のとおり、家賃補助は従業員が一度家賃の全額を支払い、企業は月々の給与に家賃補助として一部を上乗せして支払うという仕組みになっているため、給与と同じく課税対象となります。つまり、年間で支払う所得税や社会保険料が増えることになります。
所得税は、累進課税制度なので、年間の所得金額が一定ラインを超えると所得税率が上がっていきます。家賃補助をもらったことでぎりぎり所得税がアップしてしまった、などということがないよう、あらかじめシミュレーションしておくことをおすすめします。
支給対象となる条件が細かく決められている企業がある
家賃補助の支給対象となる条件は、会社によってさまざま。世帯主かどうかや雇用形態以外にも細かく決められている企業があります。一つは前述したとおり、勤務先からの距離。これは比較的定められているケースが多いので、引っ越しをする前に確認しておきましょう。
その他には、勤続年数などが条件に入ることも。「勤続年数●年以上」など、長く勤めた社員への特別待遇となっているケースもあります。また、賃貸か、持ち家かで条件が変わってくる場合も多くあります。持ち家を買うことになった場合は、住宅ローンへの補助が出るかなども確認するようにしましょう。
勤続年数が長くなると家賃補助がなくなる企業もある
勤続年数は、長いことが支給条件になることがある一方で、勤続年数が一定年数を超えるとなくなる企業もあります。給与が低い新卒からの数年間のうちは、都内の家賃を払うことで生活が厳しくなることを鑑みて家賃補助が出るが、一定の年数勤めて給与が上がると生活費への余裕が出てくるためなくなるという考え方の企業も少なくありません。
自分のライフスタイルや資金計画によって、どちらがお得か検討してみると良いでしょう。
近年、家賃補助の支給は減少傾向
残念ながら、近年家賃補助の支給は減少傾向にあります。さまざまな理由が考えられますが、その一つは同一労働同一賃金の考え方が導入されたことでしょう。正規雇用、非正規雇用に関わらず、待遇を一律にするべき、というこの考え方に基づくと、正社員のみに家賃補助を支給するということができなくなり、対象者が一気に増えることになります。
全従業員に一律で家賃補助を支給することが難しい企業は、家賃補助制度そのものを廃止し、代わりに報酬制度を見直すというケースも多いようです。
家賃補助がないと1人暮らしは難しい?
ここまで、家賃補助について詳しくご紹介してきました。では、就職して1人暮らしをするにあたって、家賃補助がないと生活は難しいのでしょうか?実際に1人暮らしをするとなった場合に必要な金額を見ながら、収入と支出のバランスはどのぐらいになるのか、シミュレーションしていきましょう。
1人暮らしに必要な金額
まず、新社会人の1人暮らしには各項目どのぐらいの金額が必要なのでしょうか。新入社員1年目、年収300〜400万円と想定した場合の生活費全国平均を見てみましょう。
支出の最も多くを占めるのはやはり家賃で、約77,000円/月が平均となりました。ついで食費、交際費・娯楽費となっており、全ての合計は約212,000円/月となりました。交際費や娯楽費など、項目によっては節約可能なものもありますが、年収から税金が引かれたうえでの手取り金額を考えると、収入と支出がほぼ同じぐらいになります。
項目 | 費用 |
---|---|
家賃 | 約77,000円 |
家具・日用品費 | 約5,000円 |
食費 | 約40,000円 |
水道・光熱費 | 約12,000円 |
保険 | 約9,000円 |
交通・通信費 | 約19,000円 |
交際費・娯楽費 | 約36,000円 |
その他 | 約14,000円 |
合計 | 約212,000円 |
※家計調査2021年 表1より
家賃は手取りの1/3が理想
一般的に、家賃は月々の手取り額の1/3が理想と言われています。大卒初任給を21万円/月と考えた場合、7万円/月ほどの家賃という計算です。エリアよって価格差はありますが、都内の物件は一般的にワンルームで約8万円/月が相場です。
仮に家賃補助が2万円/月支給されれば、少し余裕のある生活ができる、といった計算になりますね。
基本給の金額によっては家賃補助がなくても1人暮らしは可能
上記をまとめると、基本給の金額によっては、家賃補助がなくても1人暮らしは可能と言えるでしょう。給与の使い方は人によってさまざまですから、食費や娯楽費にもっと余裕が欲しい、という方は家賃補助が支給される会社を選ぶと良いでしょう。
給与がこれから少しずつあがっていくことを考えると、福利厚生を気にしすぎて選択肢が狭まるのはちょっと…という方は、他のポイントで会社選びをするのも一つの方法です。
まとめ
いかがでしたか?家賃補助制度は耳にしたことはあるけど、意外と詳細までは知らなかった、という方も多いのではないでしょうか。
入社や転職はライフスタイルが大きく変わる、人生の節目のポイントでもあります。特に、光熱費などの値上がりが大きい昨今、家賃補助があるかないかは会社選びの大事なポイントになるでしょう。後から知っておけばよかった!ということがないように、福利厚生についても遠慮せず事前にしっかり確認することをおすすめします。