賃貸物件を契約する際に必要となる敷金ですが、返還についての知識が曖昧な人は多いのではないでしょうか。
返ってこないと思っていたお金が返ってくるのは嬉しいですが、その逆は避けたいですよね。
退去の際、修繕費をどちらが負担するか、または返還される敷金の額などで貸主とトラブルになることも多いです。
この記事では、敷金が少しでも多く戻ってくるように、契約前や退去前に確認しておくべきポイントをまとめました。
目次 -INDEX-
敷金とは?
敷金とは、賃貸物件を契約する際に保険のために一旦貸主に預ける費用のことで、初期費用に含まれます。相場は地域や物件によりますが、およそ家賃の1〜2か月分程度です。
借主が契約期間中に部屋を汚したり、設備を損傷したりすると、その修繕費が預けていた敷金から差し引かれます。
賃貸物件で生活する上で発生した設備等の損傷や汚損について、損なわれる前の状態に戻すために必要な費用のことを原状回復費というので覚えておくと便利です。
家賃を滞納した際も、敷金に残高があればそこから引かれます。
返還される額とタイミング
敷金が返還される額とタイミングは、どの賃貸物件を契約するかによって異なります。契約の前に確認を取らないと、退去時に借主と貸主の間で揉め事が起こる可能性があります。
契約書を読んでもわからないことがあれば、詳しく説明を求めて事前に理解してから契約を結ぶことが大切です。
敷金はいくら戻ってくる?
敷金は、修繕費や滞納金を差し引いて、余剰が出た場合のみ借主に返却されます。反対に、余らなければ返還はされません。
敷金の返還額は、契約上で『〇〇円』と定められていない限り、物件の使用状況や家賃の納入状況によって異なります。
どのタイミングで返ってくる?
敷金が返還されるタイミングは、一般的には『退去後2か月以内』とされています。しかし、敷金の返還時期について法律では明確に定められていません。
退去後すぐに返還されることもあれば、2か月を経過しても返還が行われないこともあります。
返還が行われるタイミングについては、契約書に記載してあるものを手続き時に確認すると良いです。
トラブル防止のため、記載がなければ必ず貸主に直接確認するようにしましょう。
敷金の返還額はどこで差がつく?
敷金の返還額を出来るだけ多く残すためには、借主側が負担すべき原状回復費用をいかにカットできるかが鍵となります。
どんな場合にどちらが費用を負担するか、具体的なパターン毎に覚えておくと便利です。
借主が負担する修繕箇所
以下のようなケースは借主側が費用を負担することになります。
- 壁紙への落書きや傷
- 結露や寝具の長期放置によって生じたカビ
- 雨水による畳やフローリングの損傷
- 家具や椅子を引きずって出来る傷や凹み
- 照明器具を自分で取りつけた際にできる設置跡
- ペットによる引っ掻き傷や糞尿の臭いや汚れ
- 家電の手入れを怠ったことによる壁や床の腐敗
- 水回りの掃除不足によるカビや水垢汚れ
- 故意にあけた釘穴やネジ穴
- 鍵の紛失や破損
- 飲食物をこぼしたことによる汚損
- 台所のスス汚れや換気扇にこびりついた油汚れ
- その他、借主の過失によって生じた物品・設備の不備
主に、借主の過失でついた傷や汚れは、故意ではなくても借主負担となってしまいます。
また、家電の手入れを怠ったことにより発生した汚損などは、経年劣化とは異なり、借主の管理不足となるため、負担しなければなりません。
貸主が負担する修繕箇所
次に、以下のようなケースは、貸主側が費用を負担することになります。
- 畳や壁紙などの変色(日焼け)
- テレビや冷蔵庫が隣接していた壁の電気焼け
- ポスターなどの張り紙の跡
- 画鋲やピンによる軽微な穴
- 地震等自然災害による窓や扉の破損
- 設備家電の寿命による故障
- 照明機器を設置していた部分の電気焼け
- 畳の裏返しや交換
- 入居者入れ替え時の鍵の取り換え
- フローリングのワックスがけ
- 網戸の張り替え
- その他経年劣化や耐久年数経過による、借主に責任のない物品・設備の不備
日焼けや建物の欠損による雨漏りなどで発生した畳の変色については、貸主側の負担となりますが、借主にはこれが発覚した際の告知義務があるので、怠った場合は借主の負担となってしまいます。
引っ越し作業で家具や荷物を運び入れる前に、その時点で傷や汚れがあれば事前に貸主に報告しましょう。
借主側が契約期間中に付けたものではないことの証明になります。また、写真などの記録に残しておくのも効果的です。
敷金は返ってこない場合もある
基本的に敷金は、部屋に傷を作らず、汚さず、普通に生活していれば返ってくると考えていただいて大丈夫です。
しかし、家賃の滞納が頻繁だったり、部屋の使用状況があまりに悪かったりすると、その分だけ敷金から差し引かれるため、返還額が微量になるか戻ってきません。
最悪の場合、足りない分を退去時に追加請求されることになるでしょう。
敷金の返還に関するトラブルの多くは、原状回復の範囲に関してどこまでをどちらが負担するかといった意見の食い違いで起こっています。
借主が原状回復を義務付けられている範囲としては、借主の過失で生じた設備の破損や汚れまでです。生活していくうえで防ぐことができない経年劣化や損傷に関しては、貸主の負担で原状回復を行うこととなっています。
敷金返還に関するトラブルを防止する方法
敷金は場合によって返還されることもあれば、ほとんど返還されないこともあります。
必ず返ってくる・こないというのが言い切れないやり取りのため、自分が契約する物件の契約内容を深く理解しておかないとトラブルの原因となります。
もちろん、返還されるべき費用が返還されなかったり、借主に修繕の義務がない部分まで過剰に請求されたりといった案件は対処しなければなりません。
敷金の返還に関して納得できない場合は、管理会社に直接問い合わせるか、消費者ホットラインや国民生活センターに相談することをおすすめします。
契約内容は契約前によく確認する
国土交通省が公開している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、原状回復費を借主と貸主どちらがどこまで負担するのかが記されています。
しかし、これはあくまで目安であり、不動産会社が契約書を作成する際に、これに乗っ取らなければいけない法律はありません。
借主はガイドラインではなく、貸主の定めた契約内容に従わなければいけないため、退去の際に「ガイドラインと違う」と主張しても、「契約書には記載されている」と言われたら言い返せません。
反対に、貸主は契約書に記載されている範囲以外の原状回復費を借主に求めることはできないため、契約書の内容は細かくチェックしておくことが大切です。
敷金を取り扱う不動産会社の場合、物件の原状回復費用に関しては特約として盛り込まれていて、二重に請求されてしまう場合もあるので注意が必要です。
入居時点の物件に損傷があれば記録しておく
入居した時点であった傷や汚れに関しては、すぐに貸主に報告するようにしましょう。
後々になって報告すると、どの時点で誰が付けた傷なのかあやふやになり、トラブルの原因になりかねないので、必ず入居時に報告することをおすすめします。
契約期間中のトラブルは、なるべく早く貸主に相談する
例えば、畳は雨漏りなどで汚損した場合、速やかに告知を行えば修繕費は貸主負担となるなど、報告が早ければ早いほど損をする可能性は低くなります。
些細なことだと感じても、なにか物件に関して不具合があった場合、その都度大家さんに報告をするのがよいでしょう。
知らぬ間に積み重なった問題点が退去時に一気に発覚するより、都度不安を解消していった方が安心です。
退去時の確認作業には必ず立ち会う
入居前に報告した部屋の破損について、貸主との間で共通認識を持っていることを確認するためにも、退去時の確認作業には必ず立ち会うようにしましょう。
敷金に関するトラブルで多い、借主と貸主で認識している原状回復箇所の相違が発生しないための対策です。
原状回復が必要になるであろう項目のチェックシートなどを事前に作成し、退去作業の際に活用したり、敷金が返還された際に見積書と照らし合わせたりするといった対策の仕方もあります。
まとめ
敷金は物件の手入れを怠らず綺麗に扱っていればほぼ返還されます。
敷金返還に関してトラブルにならないように、賃貸物件を契約する際は、契約内容や特約を確実に理解しておくことが大切です。
退去の際は、借りた側も貸した側も気分良く締め括れるようこれらのことを念頭に置いておきましょう。